■超幾何関数とその歴史展望(その2)

超幾何関数は数学的内容のみならず,歴史的経緯も学ぶに値すると思われる

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オイラーは,ベキ級数

  y=1+αβ/γx+1/2!α(α+1)β(β+1)/γ(γ+1)x^2+1/3!α(α+1)(α+2)β(β+1)(β+2)/γ(γ+1)(γ+2)x^3+・・・

が,今日では超幾何微分方程式と呼ばれている微分方程式

  x(1-x)d^2y/dx^2+{γ-(α+β+1)x}dy/dx-αβy=0

を満たすことを報告していますが,ガウスは,1812年に超幾何級数

  F(α,β,γ:x)=1+αβ/γx+1/2!α(α+1)β(β+1)/γ(γ+1)x^2+1/3!α(α+1)(α+2)β(β+1)(β+2)/γ(γ+1)(γ+2)x^3+・・・

について非常に詳細な研究を行っていたことで知られています.

 例をあげると,

(1)F(α,β,γ:x)のパラメータを1だけ増加あるいは減少させた

  F(α±1,β±1,γ±1:x)

との間に3項漸化式,

  γ{γ-1-(2γ-α-β-1)x}F(α,β,γ,x)+(γ-α)(γ-β)xF(α,β,γ+1,x)-γ(γ-1)(1-x)F(α,β,γ-1,x)=0

など15個の関係式を確立させたこと

(2)  F(α,β+1,γ+1:x)/F(α,β,γ:x)

からいくつかの初等関数の連分数展開を得たこと

(3)  F(α,β,γ:x)=(1−x)^(γ-α-β)F(γ−α,γ−β,γ:x)

   F(α,β,γ:x)=(1−x)^(-α)F(α,γ−β,γ:x/(x−1))

のような同じ関数の異なる表現(関数等式)を与えたこと

等々.

 そのため,この形の超幾何関数はガウスの超幾何関数と呼ばれ,

  2F1(α,β;γ:x)

で表されます.関数の記号に大文字のFを用いている理由は,超幾何微分方程式はフックス型方程式の代表例といってもよいものであって,フックスにちなんでその頭文字Fを採用したためです.また,2と1はその解であるガウスの超幾何関数の上部パラメータ,下部パラメータの数を表しています.上部パラメータα,βの少なくとも一方の値が負の整数の場合には,ガウスの超幾何関数は有限級数になります.

 ガウスの超幾何関数は多くの特殊関数を含んでいるのですが,超幾何関数が重要なのは,多くの既知の関数がこの級数で表されるという事実で,たとえば,指数関数,対数関数,三角関数,ベッセル関数,直交多項式列,不完全ガンマ関数,指数積分,ガウスの誤差関数なども超幾何級数であって,超幾何関数は一般に収束半径1をもちます.

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