■二項定理のqアナログ(その2)
1,1+q,1+q+q^2,・・・,1+q+q^2+・・・+q^(n-1),・・・
は,q→1とすることによって,1,2,3,・・・,n,・・・に近づく.このことから逆に
1,1+q,1+q+q^2,・・・,1+q+q^2+・・・+q^(n-1),・・・
=(1−q)/(1−q),(1−q^2)/(1−q),(1−q^3)/(1−q),・・・,(1−q^n)/(1−q),・・・
は自然数のqアナログを与えていると考えることができる.
qアナログとはqの多項式であって,qを1にしたときにもとの対象が現れるようなもののことである.qアナログは量子化の概念に非常によく似た形で与えられるといったほうがわかりやすいかもしれない.
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【1】q-2項係数(ガウス多項式)
階乗n!のqアナログは
Π(1-q^k)/(1-q)
となるが,2項係数(n,m)=n!/m!(n-m)!のqアナログ(q-2項係数)を
[n,m]
と書くことにして,さらに
(a;q)n=(1-a)(1-aq)・・・(1-aq^(n-1))=Π(1-aq^k)
なる記号を導入すると
(q;q)n=(1-q)(1-q^2)・・・(1-q^n)=Π(1-q^k)
になるので,
[n,m]=(1-q^n)(1-q^n-1)・・・(1-q^n-m+1)/(1-q^m)(1-q^m-1)・・・(1-q)=(q;q)n/(q;q)m(q;q)n-m
このようにして,2項定理
(1+z)^n=Σ(n,m)z^m
のqアナログは
(1+z)(1+zq)・・・(1+zq^(n-1))=(-z;q)n= Σ[n,m]q^(m(m-1)/2)・z^m
と表すことができる.
同様に,
(1-z)^-n=Σ(n+m-1,m)z^m
のqアナログは
1/{(1-zq)(1-zq^2)・・・(1-zq^n)}= Σ[n+m-1,m]q^m・z^m
が成り立つ.
二項級数は多くの重要な性質をもっている.
(n+m,m)=(n+m,n) (対称性)
(n,m)=(n-1,m)+(n-1,m-1) (漸化式)
(n+m,m)=(n+m-1,m)+(n+m-1,m-1) (漸化式)
Σ(n,m)=2^n
Σ(-1)^m(n,m)=0
Σ(n,m)^2=(2n,n)
これらの多くがqアナログに拡張される.
[n+m,m]=[n+m,n] (対称性)
[n+m,m]=[n+m-1,m]+q^m[n+m-1,m-1] (漸化式)
[n+m,m]=q^n[n+m-1,m]+[n+m-1,m-1] (漸化式)
Σ(-1)^m[n,m]=0 nが奇数のとき
Σ(-1)^m[n,m]=(1-q)(1-q^3)(1-q^5)・・・(1-q^n-1) nが偶数のとき
Σq^m^2[n,m]=[2n,m]
Σq^m/2[n,m]=(1+q^1/2)(1+q)(1+q^3/2)・・・(1+q^n/2)
Σq^l[m+l,m]=[n+m+1,n]
ここで,Σq^m^2[n,m]=[2n,m]において,n→∞とすると
Σq^m^2/{(1-q)^2(1-q^2)^2・・・(1-q^m)^2}= Π1/(1-q^n)
が導かれる.
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