■ある三角関数の積分(その3)
[3]丹野の定理
2次元平面上で辺の長さ1の正方形と直線の交わり(切り口)は単なる線分の長さになります.ここでは,0≦a1≦a2の場合を考えますから,直線はx軸とy=−xに挟まれた領域を動けることになり,正方形の上辺,下辺には交わりません.
したがって,交わりをx軸に射影した線分の長さは1であり,n=(0,1)とa=(a1,a2)の内積を考えることによって,求める線分の長さ(体積)は
V2(a)=1/a2
であることがわかります.
3次元の場合は,少し複雑になるのですが,
(1)a3>a1+a2の場合は,立方体の上面には交わらないので,2次元の場合と同様にして,
V3(a)=1/a3
(2)a3<a1+a2の場合は上面に交わるので,その分補正が必要となるのですが,{}内で()の中が正のときのみ和をとるという意味の演算記号{}_を導入して,
V3(a)=1/a3−1/c{(a1+a2−a3)^2}_
c=4a1a2a3
で与えられることが求められます.この式は(1)の場合も含んでいます.
4次元の場合は,
V4(a)=1/a4−1/c[{(a1+a2+a3−a4)^3}_−{(a2+a3−a1−a4)^3}_]
c=24a1a2a3a4
となるのですが,これらの考察を高次元化していくことによって,次の定理が与えられます(丹野の定理,1990年).
(定理1)
Vn(a)=1/an−1/cΣ(-1)^(r-1)Σ_Lr^(n-1)
c=(n−1)!2^(n-2)a1a2・・・an,r=1~n-2
ここで,Lrは
Lr=ak(1)+・・・+ak(n-r)−ak(n-r+1)−・・・−ak(n-1)−an
ただし,k(1)~k(n-1)は1~n-1のいずれかであって,
Lr>0,k(1)を満たすものと定めます.
2次元ではa1≦a2ですからL1は存在せず,3次元の場合,
L1=a1+a2−a3
4次元の場合,
L1=a1+a2+a3−a4
L2=a2+a3−a1−a4
5次元の場合,L2型は4つあり,
L1=a1+a2+a3+a4−a5
L2=a1+a2+a3−a4−a5
L2=a1+a2+a4−a3−a5
L2=a1+a3+a4−a2−a5
L2=a2+a3+a4−a1−a5
L2=a2+a3+a4−a1−a5
L3=a3+a4−a1−a2−a5
のようになります.以下,一般のnについて,Lrがいくつあるかを数え上げると丹野の定理が証明されます.
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