■ある三角関数の積分(その2)
[2]ボールの定理
原点を通り,aに直交する超平面がH(a)なのですが,aの成分は,
0≦a1≦a2≦・・・≦an
を満たすものとしても一般性を失われません.もし,akが負ならば,xk軸の向きを逆にすることにより,akは正となるからです.
このとき,H(a)によるn次元単位立方体の切り口の体積は
Vn(a)=1/π∫(-∞,∞)Πsinc(akx)dx
と表されます(ボールの定理,1986年).この定理は,主として確率論的議論によって証明されるということです.
また,同じく,ボールによって
1≦Vn(a)≦√2
であることも証明されています(ボールの不等式).
ボールの不等式は「1辺の長さが1の正方形(2次元単位立方体)の切り口は単に線分になるから,その長さが最大となるのは対角線であって,最大値は√2となる.対角線とは頂点とその対角にある頂点を結ぶ線分で,正方形の原点を通るものである.また,(3次元)単位立方体の断面は,3角形・4角形・5角形・6角形などいろいろな形をとるが,立方体の中心を通り,辺とその対蹠に位置する辺を含む平面で切ったとき,断面積は最大値√2になる.」ことをもっと高次元化しても成り立つことを主張するものです.→コラム「高次元の球と立方体の断面積」
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