■ある三角関数の積分(その1)

【4】シンク積分と超立方体の断面積

 2002年のことであるが、阪本ひろむ氏より,次なる情報が寄せられた.関連する公式を公式集で発見し,Mathematicaで検算してみたというものである. 公式集は,

  "Table of Integrals,Series and Products"

  I.S.Gradshteyn and I.M.Ryzhik,6th Edition,Academic Press

p431-432である.そこには,

  ∫(0,∞)sin(ax)sin(bx)sin(cx)/x^ndx

とくにn=1,2,3の場合が掲げられていてる.

 それらはSinとSignがやたらとでてくる公式であって,例えば,a,b,cを正の定数0<a≦b≦cとし, (1)a+b≦cならば,   2/π∫(0,∞)sin(ax)sin(bx)sin(cx)/x^3dx=ab 左辺には定数cが含まれているのに、右辺の積分した結果には含まれていないという不思議な公式である

(2)a+b>cならば,

  2/π∫(0,∞)sin(ax)sin(bx)sin(cx)/x^3dx=ab-1/4(a+b-c)^2

が成り立つ,などである.

===================================

 これらをみて当該の公式の”幾何学的証明"が

 丹野修吉「空間図形の幾何学」,培風館

に掲載されていたことを思い出した.

 (1)の場合は,積分値がcの値によらないことに注意していただきたいのだが,丹野先生はこれらを超立方体と超平面の交わり部分の体積として証明していて,a+b≦cならば積分値がcに依存しないことは,平面が立方体の上面に交わらないことに対応するもので,この驚くべき結果も超立方体と超平面の関係を考えると理解できるというものであった.

===================================