■空間充填等面単体の計量(その11)

 Sommerville単体による高次元空間充填

Hyperspace Partition by Isohedral Simplex for An~ 

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【1】まえがき

 Sommerville四面体は,3辺の長さ[2,√3,√3]の二等辺三角形4枚からなる等面四面体である.この四面体にはそれ自体の空間充填性に加え,展開図の平面充填性というdouble dutyな性質があり,テトラパック牛乳が登場する文脈では必ず引き合いに出される特殊な四面体である.

 Sommervilleの等面四面体やHillの直角錘など特別な場合(それぞれAn,Cn無限鏡映群)でも一般的な性質を求めておくことは価値があるだろう.ここではConway, SPLAGにしたがって任意の次元に空間充填等面単体(Sommerville単体)を構成してみる.

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【2】Sommerville単体の構成

 Sommerville単体をΔn,そのfacetをFn,頂点をP0,P1,…,Pnで表すことにすると,辺の長さは適当なスケール変換の後

    |PiPj|^2=(j-i)(n+1+i-j),i<j, j=1~n

で与えられる.

 Δ2は正三角形,Δ3がSommerville四面体である.Δ4は3辺の長さが[2,2,√6]と[2,√6,√6] の2種類の二等辺三角形2枚ずつからなる四面体facetをもつことがわかる.これにより,最短辺の長さが√nのSommerville単体が構成されるが,後述するように,Sommerville単体Δnは,n次元正単体αnのn+1C2本の辺のうち,n+1C1本の辺の長さおよび高さを変えずに変形したものになっている.

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【3】Sommerville単体による空間充填

 模型を製作して,実際に目で見て確かめることができるのはΔ3とF4までに限られる.Δ3では6辺中4辺の方向に周期的柱状空間充填構造を伸長させることができて,いずれの場合もその断面は正三角形Δ2となる.

 F3では3辺中いずれの方向にも柱状平面充填構造を伸長させることができるが,F4ではP2P3方向とP1P4方向にのみ伸長可能であり,その周期的柱状空間充填体の断面は,前者ではF3すなわち[2,√3,√3]の二等辺三角形,後者では正三角形となる.F4自体は等面単体ではないが,空間充填四面体である.

 周期的空間充填体を構成できる方向とできない方向があるが,以上のことより,少なくともひとつの方向については,

 性質[1] Δnは断面がΔn-1である周期的柱状空間充填

 性質[2] Fnは断面がFn-1である周期的柱状空間充填が可能である

ことが予想される.高次元の場合でも周期的柱状空間充填構造を再帰的に構成することができ,その手順はアルゴリズム化できることから性質[1][2]は高次元のSommerville単体でも成り立つ性質であることが証明される.

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【4】Sommerville単体の体積と高さ

 最短辺の長さが√3のSommerville等面四面体の高さは,1辺の長さ√3の正四面体のそれと等しくなる.これは偶然の一致ではない.

 性質[3]  Δnの高さは1辺の長さ√nのαnのそれに等しい.

(証)n次元空間のn+1個の点に関して,頂点の座標でなく,相互のn+1C2本の辺の長さが与えられている場合は,2次元の場合のヘロンの公式を一般化したSommervilleの公式によって,等面単体の体積,底面積,高さを計算できる.最短辺の長さが√nのSommerville単体の諸計量は

 [a]体積: V^2=(n+1)^(n-1)/(n!)^2

 [b]底面積: S^2=(n+1)^(n-2)/2(n-1!)^2

 [c]高さ: h^2=(n+1)/2

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【5】まとめ

 等面四面体は無数にあり,空間充填四面体も無数にあるが,両方の性質をもつ四面体は唯一であると思われる.その意味でSommerville四面体はかなり特殊な存在である.

 任意の次元にSommerville単体を構成,その辺に沿って周期的柱状空間充填体を構成して,その断面を求めたところ,本体・展開図とも次元をひとつ下げた空間充填単体が得られた.これは予想されたことはいえ,おもしろい関係である.

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