■整数の比の形に表すことができない(その46)

【2】ロスの定理(1955年)

 「無理数αが無限に多くの既約分数解p/qをもてば,k≦2が成立する.」

ディリクレの定理からk≧2であるから,合わせるとk=2という結論を得ることができる.つまり,ロスの定理は次数k≧2の代数的数αは最良無理測度2をもつというもので,ディリクレに始まった無理数を有理数で近似する問題に関する決定的な結果であって,ディオファントス近似に対する一応の終止符が打たれたことになる.

すなわち,ディリクレの定理によると1/q^2未満に近似する分数p/qは無限個あり,ロスの定理によると,少しでも2を越えると有限個となるので,2がちょうど境目となり,最良の結果であることがわかるだろう.

この業績によりロスにはフィールズ賞が与えられることになった(1958年). ギリシア人は√2が有理数でないことを知って驚き,1900年,ヒルベルトは2^√2が超越数であるか否かを「数学の問題」として提示した.ロスの定理はそのひとつの著しい進展である.ロスの先人たちも含めると100年以上の挑戦の末,積み上げられた結果であるが,この証明は高度な数学理論を使わずとも可能なごく初等的なものであるそうである.いささかの感動をおぼえる話である.

===================================