■整数の比の形に表すことができない(その2)
【6】ディオファントス近似の近似精度
連続する2つの近似分数をan/bn,an+1/bn+1とすると,それらのうち一方は
|α−a/b|<1/2b^2を満たす.
(証)α−an/bn,α−an+1/bn+1は反対符号で,anbn+1−an+1bn=(−1)^(n+1)であるから
|α−an/bn|+|α−an+1/bn+1|
=|an/bn−an+1/bn+1|
=1/bnbn+1
任意の実数α,βに対してαβ<(α^2+β^2)/2であるから
1/bnbn+1<1/(2bn^2)+1/(2bn+1^2)
これより題意の結果が得られる.
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
連続する3つの近似分数をan/bn,an+1/bn+1,an+2/bn+2とすると,それらのうち少なくともひとつは
|α−a/b|<1/√5b^2
を満たす.
この結果から
|α−a/b|<1/√5b^2を満たす有理数a/bは無限に多く存在するを証明することができる.この定数√5は最良のもので,これより大きな数に置き換えることはできないが,黄金比φのようにαの連分数展開が有限個を除いてすべて1になる無理数を除外すれば,√5の代わりに√8を用いても成り立つ.
|α−a/b|<1/√8b^2
(補)実数x,y,整数a,b,c,dについて,
y=(ax+b)/(cx+d),ad−bc=±1
を満たすものが存在するとき,yはxと対等であるという.黄金比φあるいはφと対等な数の場合√5,対等でないなら√8である.
次に問題になるのは√2のようなαの連分数展開が有限個を除いてすべて2になる無理数で,それを除くと定理を
|α−a/b|<1/√(221/25)b^2
に改良できる.
同様の改良を続けていったときの定数√5,√8,√(221/25),・・・がラグランジュ数である.それらは
√(9−4/m^2)
において,それぞれm=1,2,5とおいたものである.
m=1,2,5,13,29,34,89,169,194,233,433,610,985,・・・
はマルコフ数と呼ばれる.マルコフ数は2次のディオファントス方程式
x^2+y^2+z^2=3xyz
の解として現れる.大いに興味をかき立ててきたディオファントス方程式である.
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