■オイラーの多面体公式から導き出される定理
オイラーの公式は単純ですが,要はその使い方というわけで,以下,オイラーの多面体公式から導き出される定理をみていくことにします.
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【1】もっと驚くべき定理
フラーレンはダイヤモンドに次ぐくらい硬く,セシウムやルビジウムなどのアルカリ金属を加えると超伝導をおこすという化学的性質をもつ.切頂20面体は頂点が60あり,どの頂点からも3本の手がでている.したがってC60では30本の二重結合(12500のケクレ構造)が描ける.また,異性体は1812種類もあり,そのうちで12個の五角形がすべて離れているものが1つだけあり,それがサッカーボール型のC60である.この形は最も安定であるが,C60,C70以外にも正五角形12枚,正六角形は20枚〜100枚以上の0次元ダイヤモンドが知られている.
球を六角形でタイル貼りすることができないこと以上に驚くべきことがある.もし球を5角形と六角形からなる地図で敷き詰めたならば,サッカーボールのようにちょうど12個の5角形がなければならないというものである.
(Q)五角形と六角形からなる多面体には五角形が常に12個ある.
(A)n本の辺をもつfn枚の面とn本の辺が交わるvn個の頂点をもつ凸多面体について,
F=f3+f4+f5+・・・
2E=3f3+4f4+5f5+・・・
6F−2E≧12
に代入すると
3f3+2f4+f5−f7−2f8−3f9−・・・≧12
地図のように2つの辺に囲まれた領域まで許すことにすると,この数え上げ公式は
4f2+3f3+2f4+f5−f7−2f8−3f9−・・・=12
となり,係数が1ずつ小さくなり,それが0となるf6は式中に現れない.
このことからもf3,f4,f5の少なくとも1つは0でない→多面体には3角形か4角形面か5角形面が少なくとも1つなければならない,同様に,多面体の少なくとも1つの頂点は3次か4次か5次でなければならない→すべての頂点の次数が6以上となることは不可能であり,必ず次数が5以下の頂点をもつことが導き出される.これもオイラーが知っていた結果であるということである.
ここで,
(1)f2=f3=f4=0だとすると,少なくとも12個のf5がなければならないことになる(フラーレン).
(2)多面体の面がすべてf5とf6であるならば,f5=12(切頂二十面体など)
(3)多面体の面がすべてf4とf6であるならば,f4=6(切頂八面体など)
(4)多面体の面がすべてf4,f6,f8であるならば,f4=f8+6(大菱形立方八面体など)
(5)多面体の面がすべてf3とf6であるならば,f3=4(切頂四面体など)
すなわち,球面を六角形と三角形で覆うとしたら,ちょうど4個の三角形が必要である.一般に,球面を六角形とn角形で覆うとしたら,ちょうどk=12/(6−n)個のn角形が必要である.n=3,4,5のとき,
k=12/(6−n)=4,6,12
であるが,これは正多面体の面数と同じである.これらの結果は極めて重要で,四色定理の証明の中核をなしている.
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[補]もし五角形x枚と六角形y枚の2種類の面のみをもつ頂点の次数が3の凸多面体に限定して考えるならば
面:x+y
辺:(5x+6y)/2
頂点:(5x+6y)/3
v−e+f=2 (オイラーの多面体定理)に代入すると,x/6=2よりx=12となる.
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[補]もしm角形x枚とn角形y枚の2種類の面のみをもつ頂点の次数がkで等しい頂点数24の準正多面体に限定して考えるならば
面:x+y
辺:(mx+ny)/2
頂点:(mx+ny)/k=24
v−e+f=2 (オイラーの多面体定理)に代入すると,x+y=12k−22となる.
k=3 → 切頂立方体,切頂八面体,正12角柱
k=4 → 小菱形立方八面体,ミラーの立体,正12反角柱
k=5 → ねじれ立方体
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