■神秘の六芒星(その14)
【1】シュタイナーの定理
小円を大円の内部におき,この2つの円の中間に次々に接する円列を作る.たいていの場合,最後の円は重なってしまい,この円列は互いに接する円鎖をなさない.しかしときとして完全な円鎖をなす場合がある.このとき,最初の円をどこに選ぼうとも完全な円鎖をなす.
シュタイナーの定理とは,最後の円が最初の円とうまく接するならば,最初の円をどこから始めたとしても円鎖は閉じるというものである.円鎖を構成する円の中心はすべてひとつの楕円上にある.また,シュタイナーの定理において,n→∞の場合がアルキメデスのアルベロスであるが,これも紋様上り藤・下り藤のデザインを想起させる.
[答](ピタゴラスの定理でも解けるが)円鎖が閉じるとき,
外接円の半径:R
内接円の半径:r
外接円と内接円の中心間距離:d
s=(1-sin(π/n))/(1+sin(π/n))
とおくと,2次同次式:
d^2=R^2-Rr(s+1/s)+r^2=(R-rs)(R-r/s)
が成り立たなければならない.同心円の場合,d=0であるから
r/R=s, R(1-sin(π/n)) =r(1+sin(π/n))
でr/Rは最大となる.
s=(1-sin(π/n))/(1+sin(π/n))
d^2=R^2-Rr(s+1/s)+r^2
を使うと,
n=4 → s+1/s=6
2R=6 (外円の直径)
R-d-r=2 (甲円の直径) → d=1-r
d^2=9-18r+r^2に代入 → r=1/2,d=1/2
R+d-r=3 (丙円の直径は3寸)
2r=1 (丁円の直径は1寸)
乙円の直径は2.4寸(余弦定理)
和算は日本特有の数学であるが,和算固有の西洋算とは違ったセンスが必要になる.科学とのつながりがなかったといえばそれまでであるが,数学の難しさを楽しむ心・遊び心にあふれていて,日本の数学愛好家たちは楽しみのための数学の発展に努め,自分たちの問題が実用上の応用をもたないことを誇りとさえ考えていたのかもしれない.
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[補]シュタイナーは19才まで農夫であったが,教師を目指してペスタロッチ学校に行き,その後,ベルリン大学教授にまでなった.シュタイナーは1826年,円と円の隙間の円鎖を詰めていってうまく詰まるならば,どこから始めても1周で閉じるという定理を証明なしに発表して,数学者たちを驚かせた.その方法が反転法で,舞台裏を知らない数学者たちは理由を知りたくてヤキモキしたという.
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