■ヒッパソスとテオドロスの伝説(その37)
√17はテオドロスによって無理数であることが示された最大の数である。
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【1】√2は無理数である
√2が無理数であることは,ギリシャ数学のなかでも有名な定理ですが,背理法を用いたその証明はだれしもが容易に理解できるものです.
(証)√2が2つの互いに素な整数の比p/qで表されるとすると,√2=p/qすなわちp^2=2q^2.したがって,pは偶数であり,p=2rという形に表すことができる.代入して2で割ると
2r^2=q^2
が得られるが,qが偶数となって互いに素という仮定に反する.
√2は1辺の長さ1の正方形の対角線の長さであるがゆえに,ピタゴラス学派によって発見された歴史上初めての無理数となったのですが,ピタゴラス学派は宇宙の万物は究極的に「整数」とそれから派生する「分数」によって表せると信じていましたから,√2が分数では表せない「無理数」であることを知ったとき,√2を奇怪な化け物だと考えて,その存在を隠し通そうとしました.これはピタゴラス学派を揺るがせることになる衝撃だったのです.
言い伝えによれば,ピタゴラスはこの発見に恐怖を抱き,無理数を発見した弟子のピッパソスを小舟に載せて連れ出して溺死させてしまったという「エーゲ海殺人事件」が起きたという伝説もあるほどです.
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