■フェルマー・シュタイナー点(その44)
【1】フェルマーの問題
微分積分の入門書に「平面上に3つの定点A,B,Cがある.この平面上に点Pをとって,AP^2+BP^2+CP^2が最小になるようにせよ」という問題が偏導関数の応用例として載せられています.その点Pは重心です.
3定点が4定点であっても同じ議論になるのですが,距離の2乗の和に特に具体的な意味があるようには思えません.むしろ,2乗を取り去ったほうが問題としては自然です(最小2乗法の問題はさておき).
そこで「A,B,C3軒の家に電線をひきたい.電線の長さを最小にするにはどこの柱を立てればよいか」ではAP+BP+CPを最小にする実用価値のある問題になります.今回のコラムではコラム「書ききれなかった形の話(その2)」,「ビリヤード問題」から長さの和を最小にする問題を集めてみました.
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この問題は17世紀のフランスの数学者フェルマーがイタリアの物理学者トリチェリに出題したものとして有名な問題で,求める点Pをフェルマー点といいます.
点Pは三角形ABCの内部にありますが,∠A,∠B,∠C<120°のときには,3頂点に至る距離の和が最小となる点は3辺を等角120°に見込む点です.∠A,∠B,∠Cのいずれかが≧120°のときには,それぞれ頂点A,頂点B,頂点Cになります.
このフェルマー点Fは頂点と外正三角形の頂点を結ぶ直線の共点として得られます.すなわち,フェルマー点Fを見つけるには与えられた三角形の各辺の上に正三角形を立てて各頂点と結ぶと,これら3本の線は1点Fで交わり∠AFB=∠BFC=∠CFAが成り立ちます.また,フェルマー点Fは3つの正三角形の外接円の交点でもあります.(正三角形のそれぞれの外接円を描くと円の交点が求めるフェルマー点である.)
このような最短配線問題は最小木問題(問題の発案者シュタイナーに因んで最小シュタイナー木問題)と呼ばれていますが,VLSI回路を設計するときの最も基本的な技術となっています.
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