■代数学の基本定理とiの1/2乗とガロア理論(その10)

√2+√3を解とする最小多項式は

 x=√2+√3

 x^2=5+2√6

 x^2-5=2√6

 x^4-10x^2+25=24

 x^4-10x^2+1=0

より、x^4-10x^2+1で与えられる。

Q(√2+√3)=Q(√2,√3)でありその拡大次数は4である。

|Q(√2,√3):Q|=4

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[1]方程式x^2−2=0

 方程式x^2−2=(x+√2)(x−√2)=0の根√2は有理数体Qには含まれない.これを含む最小の数体は2次体

  Q(√2)={a+b√2|a,bは有理数}

であり,Q(√2)は四則演算で閉じている.

 一般に,2の代わりに平方数でない整数dから始めれば,2次体

  Q(√d)={a+b√d|a,bは有理数}

が得られる.d>0の場合を実2次体,d<0の場合を虚2次体という.

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[2]方程式x^4+1=0

 x^4+1は有理数係数の多項式の積に因数分解することはできないが,Q(√2)の数を係数として認めれば,2次式の積に分解される.

  x^4+1=x^4+2x^2+1−2x^2=(x^2+√2x+1)(x^2−√2x+1)

 さらに,2次方程式の根の公式から,

  x=(±√2±√(−2))/2

が得られ,x^4+1は数体Q(√2,√(−2))に係数をもつ1次式の積に完全に分解される.

 たとえば,ひとつの根をα=(√2+√(−2))/2とおけば,

  (±√2+√(−2))/2・(±√2−√(−2))/2=1

であるから,4つの根はα,α^-1,−α,−α^1と表される.

  α+α^-1=√2,α−α^-1=√(−2)

であるから,結局,Q(α)=Q(√2,√(−2))である.

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[3]方程式x^3−2=0

 方程式x^3−2=0の実根を3√2で表すとき,3根は

  3√2,ω3√2,ω^23√2   (ω=(−1+√−3)/2)

で表される.

 純3次体

  Q(3√2)={a+b3√2+c(3√2)^2|a,bは有理数}

は他の二つの根を含んでいないという点において,Q(√2)やQ(√2,√(−2))とは異なっている.

  x^3−2=(x−3√2)(x^2−3√2x+(3√2)^2)

を完全に分解するためには,Q(3√2,3√2ω)=Q(3√2,ω)=Q(3√2,√(−3))まで係数を広げなければならない.

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[4]方程式f(x)=x^3−(s−3)x^2−sx−1=0

 この方程式の実根をαで表すとき,数体

  Q(α)={a+bα+cα^2|a,bは有理数}

は他の二つの根を含んでいる.

 f(−1/(x+1))=(−1/(x+1))^3f(x)

したがって,f(α)=0であれば,f(−1/(α+1))=0.さらにx=−1/(α+1)を−1/(x+1)に代入すれば,f(−(α+1)/α)=0.さらにx=−(α+1)/αを−1/(x+1)に代入すれば,f(α)=0に戻るので,Q(α)は巡回3次体と呼ばれる.

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[5]方程式f(x)=x^3+bx+c=0

 3次方程式の根の公式より,根を

  α=(−c/2+((−c/2)^2+(b/3)^3)^1/2)^1/3+(−c/2−((−c/2)^2+(b/3)^3)^1/2)^1/3

で表す.

  x^3+bx+c=(x−α)(x^2+αx+α^2+b)

より,他の2根は

  −α/2±(−(3α^2+4b)^1/2/2

となる.

 f(x)=x^3+bx+c=0に対して

  D(f)=6^2((−c/2)^2+(b/3)^3)=ー(4b^3+27c^2)を判別式といい,D(f)=0はこの3次方程式が重根をもつための必要十分条件である.また,

  ((−c/2)^2+(b/3)^3)}^1/2

が虚数のとき,f(x)=0は相異なる3実根をもつが,これはD(f)>0と同値である.

 一般の3次多項式の最小分解体を得るには,2次体

  Q((−c/2)^2+(b/3)^3)^1/2)とQ(ω)=Q(√(−3))

が必要になるが,もっと直接的に

  Q(α,{−3((−c/2)^2+(b/3)^3)}^1/2)

 −3((−c/2)^2+(b/3)^3)=−(3α^2+4b)((3α^2+b)/6)^2

 {−3((−c/2)^2+(b/3)^3)}^1/2=±(3α^2+b)/6{−(3α^2+4b)}^1/2

 この3次体が巡回3次体であるための必要十分条件は

  −3((−c/2)^2+(b/3)^3)

が,Qのなかで平方数になっていることである.

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