■トーラス面の作り方(その30)
【1】2次元多様体の分類定理
ゴム膜でできた長方形の4辺(または2辺)を適当に貼り合わせることを考えてみましょう.そして,長方形を時計回りに順に一周するようなラベルをつけることにします.
すると,1組の対辺だけを向きを保ったまま貼り合わせる操作はa0a^(-1)0と書くことができます.a0a^(-1)0によって円環ができあがります.a0a0すなわち1組の対辺を向きを逆にして貼り合わせる操作によって,メビウスの帯ができあがります.円環の境界は2本の円周ですが,メビウスの帯の境界は1本の円周です.
同様に,abb^(-1)a^(-1)からは球面,aba^(-1)b^(-1)からは輪環面(トーラス),abab^(-1)からはクラインの壷,ababからは射影平面が得られます.
クラインの壷と射影平面は3次元ユークリッド空間の中では描けませんが,4次元空間考えると自己交差なしに重ね合わせることができます.また,イメージするのは難しいのですが,射影平面はメビウスの帯と円板とを縁に沿って貼り合わせたものと同相です.
円環,球面,輪環面は表から裏に行くことはありませんが,メビウスの帯,クラインの壷,射影平面では縁を越えることなしに曲面の裏側にたどりつきます.こういう面を向きづけ不可能な曲面といいます.
これら6種類はすべて2次元多様体の例です.そして,コンパクトな2次元多様体はどんなものでも,円環,メビウスの帯,球面S,輪環面T,クラインの壷K,射影平面Pの6つのものを適当に連結和したものと同相になることが知られています.これが2次元多様体の分類定理ですが,その詳細については後回しにして,次に連結和の平面モデルについて考えてみます.立方体の展開図(14角形)にラベルa,b,c,d,e,f,gをつけ,ラベルを共有する2本の辺を貼り合わせると立方体の表面になる.このようなラベルや矢印の付いた多角形領域のことを構成された図形の平面モデルと呼ぶ.
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【2】平面モデル
球面S,輪環面T,クラインの壷K,射影平面Pの平面モデルはいずれも4角形でしたが,たとえば,2つ穴トーラス:2T=T#Tの平面モデルは何角形になるでしょうか?
三角形分解定理(ラドー,1920年代)により,すべてのコンパクトな曲面は平面モデルで表現することができるのですが,2Tをa,b,c,dというラベルの付いた曲線に沿って切り開くと8角形の平面モデルが得られます.
2つ穴トーラス面を真ん中で2つに分けると,トーラス面に穴のあいたものaba^(-1)b^(-1)xとxcdc^(-1)d^(-1)ができます.これらを切り開くとどちらも5角形となります.これをxで2つつなぎ合わせると辺xは内部に吸収され,8角形になるというわけです.
同様に
3T → 12角形
4T → 16角形
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100T → 400角形
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