■ルート系(その18)

[補]鏡映群

 いくつかの鏡映変換により生成される直交変換群を鏡映群という.鏡映群は数学の様々に分野で広く現れる重要な研究対象である.無限の鏡映群は基本的には直交群しかないが,有限の鏡映群は

  An(n≧1),Bn(n≧2),Dn(n≧4),E6,E7,E8,F4,H3,H4,I2(p)(p=5またはp≧7)

に分類される.

 下付きの指数はそれが働く空間の次元である.Anはn次元正単体の対称性の群と解釈することができる.Bnはn次元立方体(正8面体)の対称性の群であり,位数は2^nn!である.DnはBnに対応する群の指数2の部分群に対応している.H3は正20面体の対称性の群に対応し,I2(p)は正2面体群Dpに対応している.H4とF4はそれぞれ4次元の正多胞体(正24胞体,正600胞体)に対応している.

 ここにあげられた群はH3,H4,I2(p)(p=5またはp≧7)を除いて,すべて結晶群である.なお,線形代数はAkという特定のルート系の理論であり,ユークリッド空間やシンプレクティック空間の幾何に対応するのはBk,Ck,Dkの理論である.そこでの理論の多くは,例外型の結晶群(E6,E7,E8,F4,G2)に対してだけでなく,結晶群でないユークリッド鏡映群(I2(p),H3,H4)に対しても成り立つ.

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