■ルート系(その2)

 以下,ルート系について説明しますが,面心立方格子や対心立方格子などの結晶格子には,空間中の格子点の位置を表すのに単純並進ベクトルと呼ばれる3つのベクトルがあり,その長さと角度によって,それぞれの格子の構造を特徴づける係数が得られます.もちろん,3つのベクトルa↑,b↑,c↑の選び方は一義的には決まらず,いろいろな選び方があるのですが,4種類の鏡映三角形からなるモザイク模様に対しても同様に,R^2のベクトルの集合を考えることができます.

(6,6,6) → Φ1={a↑,b↑,a↑+b↑}

(4,8,8) → Φ2={a↑,b↑,a↑+b↑,2a↑+b↑}

(4,6,12)→ Φ3={a↑,b↑,a↑+b↑,2a↑+b↑,3a↑+b↑,3a↑+2b↑}

(3,12,12)→Φ4={a↑,b↑,a↑+b↑,2a↑+b↑,3a↑+b↑,3a↑+2b↑}

 2つのベクトルa↑,b↑はルート系の基底,また,このようにして得られたベクトルの集合Φ1,・・・,Φ1を階数2のルート系と呼ぶのですが,平面を鏡映三角形で埋めつくす問題を一般の次元に拡張して,R^nの単体に置き換えて得られるベクトルの集合が一般の階数のルート系となります.

 R^8の標準基底をe1,・・・,e8とすると,E8型ルート系は,

  Φ={e1−e2,・・・,e7−e8,e0−e1−e2−e3}

のように求まります.ルート系の分類は,それ自体大変面白いものなのだそうですが,既約ルート系の同型類には,AからGまでのアルファベットに,添字として階数をつけた名前が付いていて,E8型ルート系などと呼ぶ習慣になっています.

 ルートは鏡映を与えるベクトルとして理解することができるのですが,8次元ユークリッド空間において,8次元単体(4面体の拡張)を鏡映したものからなるモザイク模様に対してベクトルの集合を考えることによって,E8型ルート系が得られるというわけです.

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