■折り紙による作図問題(その25)
【1】ミウラ折りとガウス曲率
宇宙構造物の設計者,三浦公亮先生は不思議な開閉をする折り畳み式構造物を考え出された.これがミウラ折りであるが,学問的な名称は「可展二重波形面」(DDC surface)で,いたるところガウス曲率が0の展開可能面である.折り紙でモデルを作ることができるのはそのためである.
ガウス曲率とは曲面上の1点を通る無数の曲線の曲率の最大値と最小値を掛け合わせた値である。ガウス曲率はその曲面を変形しても不変である。この不思議な性質はガウス自身が「驚くべき定理」と評している。ガウス曲率が0の場合、曲面の上には直線が載っていて、平面から変形可能な曲面、平面に展開可能な曲面という意味で、「可展面」と呼ばれる。ガウス曲率が0でない場合、どんなに変形しても平面に展開することはできないので、ガウスの驚異の定理はどんな図法を用いても地球の正確な地図を平面に描くことはできないことも示している。
ミウラ折りは人工衛星の展開式太陽電池パネルに採用された.また,非常に薄い材料でできた円柱,たとえば,缶ビールの空き缶を立てておいて軸に沿って均等に力をかけるとダイヤモンドパターンが現れる.このパターンは吉村慶丸教授にちなんで「吉村パターン」と呼ばれているが,三浦公亮先生はそれを円柱以外の一般曲面に発展させた.
実際,製造時に吉村パターンを実現させて,強度を保ちながら材料を約30%も減らしたキラキラ光るチューハイ缶が市販されているから,ご存じの方も多かろう.じつはこれももともと宇宙工学で考え出された頑丈な形であって,学問的な名称は「疑似円筒凹多面体」(略称PCCP).すなわち,アンチプリズムを重ねた疑似円筒形であって,そのガウス曲率はいたるところ0になっている.だから折り紙でモデルを作れるのだ.
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