■折り紙による作図問題(その21)

 折り紙の折り目による包絡線として円錐曲線を表すことができますから,折り紙は2次方程式を解く力ももっています.

[1]平行線の線分の端点を1点に集めるように折り返せば、準線までの距離と焦点までの距離が等しくなって放物線になる

[2]円周上の点を円の中にある1点に合わせて折り返した時の折り目が描く曲線は楕円となる

[3]円周上の点を円の外にある1点に合わせて折り返した時の折り目が描く曲線は双曲線となる

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天体力学では互いに引力を及ぼしあっている二つの物体は3種類の円錐曲線、すなわち楕円、放物線、双曲線のうちのいずれかの軌道になります。例えば、地球から打ち上げた人工衛星の初速が秒速7.9km(第1宇宙速度)のとき円、それ以上で秒速11.2km(第2宇宙速度)以下のとき地球を焦点とする楕円、秒速11.2kmのとき放物線、それより速いときは双曲線を描くといった具合です。放物線軌道、双曲線軌道になると地球の重力圏を脱出し、もう地球に戻ってくることはありません。このように、円錐曲線は天文学において重要な役割を果たすことになり、力学と幾何学の間には美しい調和が存在していることになります。

ニュートンは「プリンキピア」のなかで5点を通る円錐曲線の作図法などを案出しながら壮大な天体力学を展開しています。これらの曲線はケプラーの業績を継いだニュートンによって惑星や彗星の軌道として統一的に示され示され、科学革命をもたらしたのです。

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【補】パスカルの定理とは、「円錐曲線、すなわち楕円、双曲線、放物線に内接する任意の六角形の三組の対辺の交点は同一直線上にある。」というもので、この定理の重要な系が「円錐曲線は任意の5点で一意に定まる」です。

 パスカルはこの有名な定理をわずか17才の時に発見したのですが、これは射影幾何学の基本定理の一つになっています。射影幾何学とは、長さや角の大きさに無関係に、例えば、いくつかの点がある直線上にあるといった関係、射影によって不変な図形の性質、を研究する学問で、射影平面上では、円錐曲線はただ1種類しかなく、双曲線・放物線・楕円などの区別はなく、どれも同種の曲線となります。

 また、射影平面上では点という語と直線という語を入れ替えても定理は成り立っています。これをポンスレーの双対原理と呼び、射影幾何学の最も美しい特質です。パスカルの定理から150年以上たって、その双対(円錐曲線の外接する6辺形の対角線は1点で交わる)が発見されたのですが、それがブリアンションの定理です。

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