■折り紙による作図問題(その12)

 折り紙は斜めに折った紙の上に農作物を載せて神前に供えるという習慣から発展した古い文化である.たとえばミウラ折りは太陽電池パネルのデザインに応用できる.最近では動脈のステント,ロボット,人工衛星のソーラーパネルなど思いがけない分野に応用されている.

 日本は折り紙最先端国であり,折り紙は日本の伝統的お家芸であるが,日本人の名前を冠した折り紙定理「芳賀和夫の定理」や「前川淳の定理」があるという.後者はm-v=2というものである。

 折り紙を使えば倍積問題(デロスの問題)が解けますし,角の3等分も可能です.円積問題(古代ギリシアの3大作図不可能問題のひとつ)は折り紙でも解くことはできませんが,折り紙は3次方程式・4次方程式を解く力をもっているというわけです.4次を超える能力はありませんが・・・.

 アルハーゼンの問題の答えも実4次方程式の解として表すことができます.

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【1】ヘロンの問題

(Q)直線Lの同じ側にある2点F1,F2からの距離の和F1P+PF2が最小になるようなL上の点Pを求めよ.

という問題を考えてみます.

 この問題は「ヘロンの問題」と呼ばれていて「町F1から町F2に行くとき,川岸Lの点Pに立ち寄るものとする.このとき道のりの長さが最小となるような点Pを求めよ.」という実用価値のある寄り道問題ですし,反射光学の問題あるいはビリヤード問題とも考えることができます.

(A)答は簡単に求めることができる.点F2を直線Lに関して対称移動させF0とする.直線F1F0と直線Lの交点が最短距離となる折り返し点Pである.

 この最適な点Pには線分F1PとF2PがそれぞれLとなす角が等しいという性質があります.また,このことは三角形のフェルマー点Fが3つの頂点への距離の和を最小にすること,∠AFB=∠BFC=∠CFAが成り立つこととよく類似しています.

 ヘロンの問題のバリエーションとして「町F1から川の反対側にある町F2に行くとき,川岸Lの点Pに立ち寄り,一定幅dの川を渡るものとする.このとき道のりの長さが最小となるような点Pを求めよ.」などもよく見かける問題です.どこに橋を架けたらいいかという問題ですが,川幅は一定ですから点F1を川幅の分だけ平行移動した点をF0として,F0とF2を結ぶ直線が川のF2側の岸と交わる点に橋を架ければ最短経路であることがわかります.

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【2】アルハーゼンの問題

 ヘロンの問題に対して,「アルハーゼンの問題」とは寄り道するのが川ではなく池となったものです.すなわち

(Q)町F1から川の同じ側にある町F2に行くとき,円形の池岸の点Pに立ち寄るものとする.このとき道のりの長さが最小となるような点Pを求めよ

というものです.

(A)点Pが求められたとして点Pで円の接線を引き,点F2を接線に対して反対側に対称移動した点をF0とする.このとき,F1P+PF0が直線になればよいので,∠F1PF2が点Pを通る円の直径で2等分されるとき最短距離になる.したがって,F1,F2を焦点とし円の接する楕円と求めればよい.

 点Pが存在することは確かですが,では点Pはどうやって求めたらいいのでしょうか.純幾何学的に解くのは難しそうですから,点Pを解析幾何学的に求めようとすると4次方程式の解に帰着されるため,解はもし存在すれば4個あるいは2個,または解なしとなります.

 いずれにせよアルハーゼンの問題とヘロンの問題との違いはアルハーゼンの問題が(特殊な場合を除いて)定規とコンパスだけでは作図不可能な問題ということであって,F1,F2を焦点とし円の接する楕円を作図するという問題は作図問題としては解答不能なのです.

 なお,アルハーゼンの問題の拡張として「町F1から川の反対側にある町F2に行くとき,川岸Lの点Pに立ち寄り,一定幅dの「環状」の川を渡るものとする.このとき道のりの長さが最小となるような点Pを求めよ.」が考えられます.同じ側→反対側,池岸→「環状」の川岸に変わっています.

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 また,円を他の円錐曲線に置き換えて一般化した問題ついては読者の演習問題としたいのですが,楕円ではF1P+F2P=一定であり片方の焦点から出た光線は楕円上で反射して第2の焦点に向かうとか,双曲線ではF1P−F2P=一定で片方の焦点から出た光線が表面にあたって反射するとあたかも第2の焦点から出たように反射するとか,放物線の焦点を出た光は曲線上で反射して曲線の対称軸に平行に進むという幾何光学的特徴はすでにご存知であろうと思います.

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