■高次元図形の研究法(その16)

 2次元空間充填図形の基本形は正六角形,3次元空間充填図形の基本形は切頂八面体です.菱形十二面体,立方体,正六角柱などの空間充填図形は切頂八面体の辺を点に縮めて退化させたものと考えられます.

 このことの4次元版を考えると,30胞体が基本形となるのですが,この図形は10個の切頂八面体(466)と20個の正六角柱(644)からなります.

 →コラム「ボロノイ細胞と平行多面体(その2)」

 ボロノイベクトルのアイディアを用いると,n次元空間充填図形の基本形は2(2^n−1)面体になることがイメージできるようになりました.ボロノイベクトルは簡単なアイディアなので,いったんイメージできるようになると,これらのことが確信されます.

 ところで,4次元30胞体は他にもいくつかあると思われるのですが,乙部融朗住職にこの辺の事情についてご教示していただきました.

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【1】準正多体胞目録

 オトベ著:準正多体胞目録(241種)より,4次元30胞体は10種抜粋されました.発見順に

点 線 壁 体 射 葉 吊

# 31(1978/03/06) 20 60 70 30 6 12 8 単胞体離,正4/3434/正8,三層胞

# 35(1979/08/25) 10 40 60 30 8 18 12 単胞深端欠,裏胞

# 97(1983/11/26) 60 150 120 30 5 8 5 単胞浅端欠,6壁離

#115(1983/12/06) 120 240 150 30 4 6 4 単胞深端欠,△壁離後6再壁離

#135(1984/05/03) 18 72 78 30 8 14 8 △拗台,2×△環→小拗柱

#159(1988/08/03) 24 72 78 30 6 12 8 □&◇,3環

#164(1988/10/01) 32 128 126 30 8 12 6 24胞の体壁2ツを□に変化,非正△

#191(1990/04/29) 40 100 90 30 5 9 6 6吊柱,F=0・6・0,N=5環

#195(1990/04/29) 40 100 90 30 5 9 6 6吊柱,F=2・2・2,N=5環

#217(1990/04/29) 48 120 102 30 5 9 6 6吊柱,F=0・2・8,N=3環

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 3次元・4次元・5次元の図形で2辺角・2面角・2体角の和が2πとなってフラットになったとき,2次元・3次元・4次元の無限充填図形となります.大筋は立方格子を基にして導出され,1次元上での考察をしなければなりません.5次元では正形のみのものは{4,3,3,3}立方格子,{3,3,4,3}偶胞充填,{3,4,3,3}24胞充填の3つです.

 4次元の立方格子を端欠すると

         正    浅端欠    中端欠   深端欠

変形体     立方    388   3434   466

点生体            正8    正8    466

       1体種A   2体種B  2体種C   1体種B

射・葉・吊 6・12・8 5・8・5 8・12・6 4・6・4

 3次元の空間充填は準正形を含むものも入れて12種類あります.

1体種型 2ツ 射・葉・吊

2体種型 4ツ 4・6・4    4ツ

3体種型 5ツ 5・8・5    3ツ

4体種型 1ツ 6・9・5    2ツ

6・12・8   1ツ

8・12・6   1ツ

12・24・14 1ツ

 4・6・6の双対は4集項を僅かに高くすると菱形12面体になるので,この変形で隙間が埋まり空間充填形になります(オトベ).

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【2】n次元空間充填

  #115(1983/12/06) 120 240 150 30 4 6 4

が切頂八面体(466)×10と正六角柱(644)×20からなる4次元空間充填図形である.

  V=120,E=240,F=150,C=30

  1つの頂点の周りに集まる胞数は(466)×2,(644)×2.

[補]正多面体(p,q)を境界多面体とする4次元正多胞体では,頂点に集まる辺の中点を結んでできる多面体を頂点図形(v2,e2,f2)と呼ぶことにすると,それはq角形が1つの辺にr面会した多面体(q,r)になっている.

  (v2,e2,f2) → 射・葉・吊

  v2=4,e2=6,f2=4

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 n次元正多胞体が(n−1)次元胞を共有しあいながら各(n−2)次元構成要素の周りに一定の状態で集まって,n次元空間を隙間なく埋め尽くすことがある.たとえば,3次元空間内において立方体{4,3}が面を共有しあいながら各辺の周りに4個ずつ集まると3次元立方格子{4,3,4}になる.

 4次元空間において正多胞体{a,b,c}が胞を共有しあいながら各面の周りにd個ずつ集まる4次元空間充填図形を{a,b,c,d}と書くことにすると,これには4次元立方格子{4,3,3,4},正16胞体格子{3,3,4,3},正24胞体格子{3,4,3,3}の3種類がある.

 3次元空間を埋め尽くす正多面体は立方体のみである.5次元以上の空間でもn次元立方体のみが空間充填図形となるのに対して,4次元空間の充填図形は多彩である.

 また,2種類以上の正多胞体の組み合わせで各辺の周りに一定の状態で集まる空間充填としては,3次元空間内において正4面体と正8面体が交互に集まるものがあるが,この4次元版は正16胞体単独による空間充填{3,3,4,3}となってしまう.4次元以上の空間で2種類以上の正多胞体の組み合わせによる空間充填図形は存在しないことになる.

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 n次元準正多胞体でも,1種類だけあるいは2種類以上を混在させた形で(n−1)次元胞を共有しながらn次元空間を隙間なく埋め尽くすことがある.3次元空間では立方格子{4,3,4}を作り,各頂点の周りを少しずつ削っていくと切頂8面体による空間充填になり,各頂点の周りに4個ずつ切頂8面体が集まる.

 4次元空間の場合,4次元立方格子{4,3,3,4},正16胞体格子{3,3,4,3},正24胞体格子{3,4,3,3}の各頂点の周りを少しずつ削っていくことになる.

 4次元立方格子{4,3,3,4}を切断した場合の1種類だけの準正多胞体による4次元空間充填図形として,正6角柱20個と切頂8面体10個からなる30胞体がある.この場合,各頂点の周りに5個ずつ30胞体が集まる.一般に,3次元の切頂8面体(14面体),4次元の30胞体のn次元版空間充填図形は,正6角柱と切頂8面体の組み合わせによるもので,各頂点の周りにn+1個ずつ集まる.

 3次元正8面体に相当するのが4次元正16胞体である.正8面体は空間充填図形ではないが正16胞体は空間充填図形であって,格子状配列が可能である.正16胞体格子{3,3,4,3}を切断した場合は3次元立方体と切頂8面体の組み合わせた準正多胞体ができる.

 3次元空間の場合,正8面体を切頂すると切頂8面体ができ単独空間充填図形となるが,4次元切頂16胞体の場合は4次元立方体と混在させないと空間充填しない.4次元図形の落とし穴である.

 一般のn(≧4)次元において,3次元立方体と切頂8面体の組合せた切頂2^n胞体とn次元立方体を混在させたn次元空間充填図形が存在する.

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