■病理形態学原論と・・・(その9)

オイラーの多面体定理が物理的作用と結びつくと,興味のある幾何学的効果が出現するのであるが,石鹸の泡細胞に対して,オイラーの多面体定理を使うと

[1]2次元では泡細胞は6角形を中心とした分布をなし(面数の平均は<6),すべての泡細胞が6辺以上の辺をもつことは不可能である

[2]3次元では泡細胞は14面体を中心とした分布をなし(面数の平均は<14),すべての泡細胞が14面以上の面をもつことは不可能である

ことが証明される.

 ケプラーが雪の結晶はなぜ六角形であるのかと考えたのは1611年のことであった.六角形は,たとえば蜂の巣など現実世界で非常によく見られる.そして,その構成原理は六角充填の効率性と関連しているというものであった. ケプラーといえば,惑星の運行法則で有名であるが,天文サイズばかりでなく,ミクロな世界にまで注目し「神のなせる業」を見いだそうとしていたのである.

===================================

 2次元の泡細胞の多くは六角形であり,3次元の泡細胞の多くには14面体であることはわかったが,4次元の泡細胞がどのような形になるのかを知る人は(たとえいたとしても)非常に少ないであろう.高次元への拡張であるが、結論を先に言うと面数は2(2^n−1)個となるのである。

n=2   f1=6

n=3   f2=14

n=4   f3=30

n=5   f4=62

これらはA群空間充填と呼ばれるものである。

それでは、面の形はどうなるのだろうか? 3次元の場合,6組の平行な辺によって切頂八面体が定められることになるのだが,4組(8枚)の六角形面と3組(六枚)の四角形面からなる14面体が得られる.3次元空間を充填するとき,切頂八面体は各頂点の周りに4個ずつ集まる.1点に4個の多面体が会すると頂点や辺だけで接している多面体がなくなり,ボロノイ分割に対して安定となる.

 4次元の場合は5組(10個)の切頂八面体と10組(20個)の六角柱からなる30胞体となる.これはケルビンの立体の4次元版で,各頂点の周りに5個ずつ集まる. 切頂八面体(466)×10と正六角柱(644)×20からなる4次元空間充填図形の諸計量は,

  V=120,E=240,F=150,C=30

  1つの頂点の周りに集まる胞数は(466)×2,(644)×2

となる.

===================================

以上が、私が高次元幾何学について考えるようなきっかけです。n次元格子の幾何学的分類をボロノイ細胞を使って考えると、n次元空間充填図形の基本形が2(2^n−1)面体になることをイメージできるようになります.

===================================