■病理形態学原論と・・・(その7)
【3】分割多面体の幾何学的性格
このような簡単な自然の摂理からどのようなことが理論的に誘導されるのだろうか? v,e,fをそれぞれ頂点,辺,面の数とする.面は多かれ少なかれ曲面となるのが通例であるから,多面体は面が曲面であっても辺が曲線であってもかまわないという前提をおいて考えてみよう.
分割された空間から1個の多面体を分離して考えてみると,1個の頂点に3本の辺が集まり,1辺は2個の頂点を結ぶから
2e=3v
また,オイラーの多面体定理
v−e+f=2
により,
v=2(f−2),e=3(f−2)
つまり,面の数fが与えられれば頂点の数vと辺の数eは一義に決まり,頂点の数は必ず偶数になることがわかる.とはいっても,面の数は一義的には決まらず,統計的にしか扱えないのであるが,面の数fはほぼ14をピークとする分布を示すことが認められている.たとえば,植物細胞についての観察結果では全体の74%が12〜16面であり,56%が13〜15面(平均13.96面)という値が得られている.
そこで,f=14なる多面体について調べてみると
v=2(f−2)=24,e=3(f−2)=36
つぎに,面が何角形になるかを求めてみると,これはもちろん1通りではないが,1本の辺は2個の面によって共有されることを考慮し,各頂点に平均してp角形がq面が会するとすると,pf=2e,qv=2eより,その平均辺数pと平均会合面数qは
p=2e/f=5.14・・・
q=2e/v=3
を得ることができる.
このことから,14面体の面のかたちについては,必然的に辺数5を中心とする分布をなすことが示唆される.このことは,経験的に5角形の頻度が最も高いという観察結果に一致しているのである.
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【4】空間分割と14面体
1点に4個の多面体が会し,1本の線の周りに3個の多面体が合するというのが空間分割の局所条件であるが,その局所条件を満足させ得る多面体は何であろうか?
f=14の単一多面体による空間分割を考えると,まず,切頂八面体とその変形,すなわち8個の六角形と6個の四角形の面をもつものがあげられる(4^66^8).これは1887年にケルビンが石鹸の泡による空間分割の力学的研究から誘導したものである.
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