■病理形態学原論と・・・(その5)

【2】安定な平面分割・空間分割

 正三角形と正方形による平面分割は頂点だけで接している多角形があるので,ボロノイ分割に対して安定とはいえません.点のわずかな動きによって,ボロノイ分割が激変してしまうのです.したがって,ボロノイ分割の意味で安定なものは六角形による平面充填だけということになります.

 それでは,3次元ではどうでしょうか? 正多面体による空間充填を考えると,立方体は明らかに空間を埋めつくすのですが,立方体を除く正多面体はどれも空間を充填しません.5種類ある正多面体(プラトン立体)の中では立方体だけ,16種類ある準正多面体(アルキメデス立体:2種類以上の正多角形から構成されている立体)の中では切頂八面体だけが空間を単独で埋めつくすことができます.

 切頂八面体(truncated octahedron)は名前のとおり正八面体の各辺を三等分して頂点を切り取った後に残る多面体です.実は,準正多面体のなかで空間充填が可能なのは切頂八面体−−正6角形8枚と正方形6枚の2種類で作る14面体−−しかありません.切頂八面体は対心立方格子のボロノイ多面体です.

 また,それ以外の単独空間充填形となる多面体としては,菱形十二面体(rhombic dodecahedoron )があげられます.菱形十二面体は,面が正多角形ではないので準正多面体ではありませんが,対心立方格子のボロノイ多面体になっています.

 立方体,菱形十二面体,切頂八面体のうち,1点に4個の多面体が会してボロノイ分割に対して安定なものは切頂八面体だけなのですが,このことは14面体が最も多いとする実験的研究から得られた値を裏付ける1つの根拠を与えてくれます.

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