■病理形態学原論と・・・(その3)

  1887年,ケルビン卿(ウィリアム・トムソン)は14面体の集合によって空間を満たすことができ,そのときの界面積は菱形十二面体(rhombic dodecahedoron)で満たしたときより小さいことを発見しました.すなわち,14面体は表面張力を最小とする空間分割構造であると考えることができます.

 この14面体(ケルビンの14面体)は,3対の合同な四角形の面と4対の合同な6角形の面とで囲まれています.最も簡単な場合は,6個の正方形と8個の正六角形とからなり,すべての辺の長さが等しいもの,すなわち,切頂八面体(truncated octahedron)です.切頂八面体は16種ある準正多面体(アルキメデス体)のひとつです.

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 当時,私自身は2次元の図形情報を3次元空間に昇華させる方法について,諏訪先生の研究を知らないままにいろいろ悩んでいたのですが,「病理形態学原論」の読後,目からうろこ状態になったことを申し添えておきます.半世紀年前に書かれた「原論」は,今日でも若い学徒たちへの入門書として極めて高い価値をもっていると思われたからです.

 興味深いことに,諏訪先生の研究は,問題点は何か・それをどう解決すべきかという実際的な問題意識から出発して発展した形態学的研究のもっとも顕著な例の1つであるということです.にもかかわらず「原論」はいまだ認識されているとはいいがたい著書です.何も医学・生物学に限ったことではありませんが,関連分野に「原論」の普及を促したいものです.

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