■病理形態学原論と・・・(その1)

 小生は地方の病院に勤務する一介の病理医である。まわりの病理医からは病理よりも数学に嵌まったた変人、数学者からは所詮アマチュアと思われているに違いない。それはそれで構わないのであるが、なぜ、数学に嵌まることになったのか一度話しておいた方がよかろうと思う。

===================================

当時、大学を離れ、地方の病院に勤務することになったのであるが、研究費もなくなり、何をやるべきかという日々を過ごしていた。もちろん病理医としての与えられた責務は果たしているのであるが、それだけでは物足りない。空虚感に満たされていたのである。

そんな折、先輩病理医の手塚先生より

  諏訪紀夫「病理形態学原論」岩波書店

を勧められた。諏訪先生は手塚先生の指導教官をされた病理形態学者で、私とは一面識もない。私が学生時代に講義を受ける前にはすでに退官されておられたので、講義を拝聴する機会もなかった。

後で知ったのであるが、フィールズ賞を受賞した小平邦彦先生と一高時代に同部屋、ドイツ語に堪能で、数学も得意だったという。

===================================