■レムニスケートの幾何学(その142)

【2】ヤコビの楕円関数とテータ関数

 この節ではヤコビの楕円関数について補足説明することにします.ヤコビは,第1種不完全楕円積分

f(x)=1/{(1-x^2)(1-k^2x^2)}^(1/2)

ω=F(z)=∫(0-Z)f(x)dx

に対して,正弦関数をまねてF^(-1)(ω)をsnω=F^(-1)(ω)と定義し,

sn^(-1)z=∫(0-Z)f(x)dx

を得ました.

 また,三角関数にならって

cnω=√(1-sn^2ω),dnω=√(1-k^2sn^2ω)

と定義しました.関数sn,cn,dnがヤコビの楕円関数ですが,少し複雑な三角法と思えばよく,三角関数同様,ヤコビの楕円関数からはいろいろな加法公式を導き出すことができます.

 なお,第1種不完全楕円積分において,k→0とすると,

K(0)=∫(0-Z)f(x)dx=sin^(-1)z

k→1とすると,

K(1)=∫(0-Z)f(x)dx=tanh^(-1)z

ですから,snωはsinωとtanhωの中間に位置していることがわかります.

 実際にベキ級数展開を求めると,

snω=ω-(1+k^2)/6ω^3-(3+2k^2+3k^4)/40ω^5+・・・

が得られます.

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 ヤコビの楕円関数sn,cn,dnを三角関数に対応する2重周期関数とするならば,ヤコビのテータ関数は指数関数に対応する擬2重周期関数です.ヤコビのテータ関数

  θ3(z)=1+2Σq^(n^2)cos(2nπz)

は指数関数(周期関数)に対応しているのですが,ヤコビはテータ関数を使うことによって,ヤコビの楕円関数(二重周期関数)を表すことにも成功しています.

 ヤコビが定義したテータ関数はθ3を含めて4つあります.

  θ4(z)=Σ(-1)^nq^(n^2)y^(2n)

     =1+2Σ(-1)^nq^(n^2)cos(2nπz)

  θ2(z)=Σq^((n+1/2)^2)y^(2n+1)

     =2Σq^((n+1/2)^2)cos(2n+1)πz

  θ1(z)=1/iΣ(-1)^nq^((n+1/2)^2)y^(2n+1)

     =2Σ(-1)^nq^((n+1/2)^2)sin(2n+1)πz

 qの指数は整数Zや半整数Z+1/2の2乗ですが,このことから整数あるいは半整数のつくる1次元格子上の2次形式と理解することができます.そして,整数・半整数,交代・非交代の組合せから4つのテータ関数が定義されるというわけです.

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