■レムニスケートの幾何学(その81)

 レムニスケートサインとワイエルシュトラスのペー関数の関係は,

  sl(z)=-2p1(z)/p1’(z)

  sl’(z)=(4p1(z)^2-1)/(4p1(z)^2+1)

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【1】レムニスケート積分からワイエルシュトラスの標準形へ

 レムニスケート周長

  ∫1/(1-x^4)^(1/2)dx

の5等分問題を扱うには,2008年に行った定式化ではうまくいきそうになく,ワイエルシュトラスの標準形

  ∫(∞,0)du/(4u^2-g2u-g3)^(1/2)

の特別な場合として扱ったほうが容易であった.

  ∫(0,x)1/(1-x^4)^(1/2)dx

は変数変換

  x=1/√z,dz=-z^(-3/2)/2dz

により

  ∫(x,∞)1/(4z^3-4z)^(1/2)dz

となる.これは慣用の記号でg2=4,g3=0のワイエルシュトラスの標準形である.

 ワイエルシュトラスのペー関数p(u)を単にpと略記すると

[1]微分方程式は

  (p’)^2=4p^3-4p

  p”=6p^2-2

  p^(3)=12pp’

  p^(4)=120p^3-72p

[2]加法定理

  p(u+v)=-p(u)-p(v)+1/4{(p’(u}-p’(v})/(p(u}-p(v})}^2

は,v→uの極限で倍角公式

  p(2u)=-2p(u)+1/4{p”(u}/p’(u}}^2

 =-2p+1/4・(6p^2-2)^2/(4p^3-4p)

 =(p^4+2p^2+1)/(4p^3-4p)

を得る.

 以下,v→2u,3u,4uとすると3倍角,4倍角,5倍角公式が得られる.それとて加法公式が格段と簡単になるわけではないが,レムニズケートサインの有理関数表現と同様になることがわかるだろう.

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【2】∫1/(1-x^6)^(1/2)dx

 レムニスケート周長

  ∫1/(1-x^4)^(1/2)dx

の5等分問題を扱う前に,

  ∫1/(1-x^6)^(1/2)dx

について考えてみたい.

 変数変換

  x=1/√z,dz=-z^(-3/2)/2dz

により

  ∫(x,∞)1/(4z^3-4)^(1/2)dz

となる.これは慣用の記号でg2=0,g3=4のワイエルシュトラスの標準形である.

 ワイエルシュトラスのペー関数p(u)を単にpと略記すると

[1]微分方程式は

  (p’)^2=4p^3-4

  p”=6p^2

  p^(3)=12pp’

  p^(4)=120p^3-48

[2]加法定理

  p(u+v)=-p(u)-p(v)+1/4{(p’(u}-p’(v})/(p(u}-p(v})}^2

は,v→uの極限で倍角公式

  p(2u)=-2p(u)+1/4{p”(u}/p’(u}}^2

 =-2p+1/4・(6p^2)^2/(4p^3-4)

 =(p^4+8p)/(4p^3-4)

を得る.

 ∫1/(1-x^6)^(1/2)dxは1/2・∫1/(x^3-1)^(1/2)dxに帰着されたが,このことから

  r^3=cos(3t)

は定規とコンパスだけで弧長を1/3,1/5,・・・倍にする作図が不可能であることが示される.

  ∫(0,z)1/(1-x^3)^(1/2)dx

は,第1種楕円積分の標準形(ヤコビの形)

  F(k,φ)=∫(0,φ)dθ/(1-k^2sin^2θ)^(1/2)

を使うと

  ∫(0,z)1/(1-x^3)^(1/2)dx=1/4√3F(k,φ)

  φ=arccos((√3-1+x)/(√3+1-x))

  k=(√3+1)/2√2

  ∫(0,z)1/(x^3-1)^(1/2)dx

は,

  ∫(0,z)1/(x^3-1)^(1/2)dx=1/4√3F(k,φ)

  φ=arccos((x-√3-1)/(x+√3-1))

  k=(√3-1)/2√2

と表される.   一松,数学公式Ⅰ,p148,岩波

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