■レムニスケートの幾何学(その37)

【1】虚数乗法をもつ楕円関数

 加法・減法公式

  dy/p(y)^(1/2)=±dx/p(x)^(1/2)

で,加法公式を繰り返し適用すれば乗法公式

  dy/p(y)^(1/2)=a・dx/p(x)^(1/2)

を導くことができるが,微分方程式

  dy/{(1-c^2y^2)(1+e^2y^2)}^(1/2)=a・dx/{(1-c^2x^2)(1+e^2x^2)}^(1/2)

を満たすようなxの有理または無理代数関数yをすべて求める問題は,特別な場合として変数の倍加(等分)の問題も含んでいる.

 アーベルは異なるモジュールをもつ同じ形の積分

  dy/{(1-c1^2y^2)(1+e1^2y^2)}^(1/2)=a・dx/{(1-c^2x^2)(1+e^2x^2)}^(1/2)

に変換する方法を示すことによって,代数的に可解となるような楕円関数のあるクラスを発見することができた.これが虚数乗法をもつ楕円関数である.

 そして,アーベルは

[1]もしこの微分方程式が代数積分をもち,aが実数ならばaは必ず有理数でなければならない

[2]もしこの微分方程式が代数積分をもち,aが複素数ならばaは必ずm±i√n(m,nは有理数)の形でなければならない

ことを証明した.これは楕円関数論に虚数乗法が現れた最初の事例と考えられている.

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