■交角60°(その77)

2次元の極大格子の問題は整域の問題と同じである。

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【2】ユークリッドの互除法

ユークリッド整域とは,ある数体系内で,除法

  α=β・γ+δ,|δ|<|β|

は可能かという問題です.複素数版のユークリッドの互除法でも割り算の余りδが|δ|<|β|として表現されれば,アルゴリズムが定義できます.ここでは,Z(√-d)整数の体系内で,除法

  α=β・γ+δ,|δ|<|β|

は可能かというユークリッド整域の問題を考えてみます.

Q(√-d)の部分集合Z(√-d)は

  Z(√-d)={a+b√-d|a,bは整数}

で定義されます.Z(√-d)は複素平面内で幅1×高さ√dの直交格子を形成しますから,β^-1αに最も近いZ(√-d)の整数γが1未満にあるためには,

l^2=(√d/2)^2+(1/2)^2

  d=1のとき,√2/2<1(ユークリッド整域)ガウス整数環

  d=2のとき,√3/2<1(ユークリッド整域)

d≧3のときユークリッド整域でないことが幾何学的に証明されます.

Z(√-3)はユークリッド整域ではありませんが,それではZ((-1+√-d)/2)はどうでしょうか?  これは複素平面内で斜交格子を形成し,その菱形の4頂点は

(0,√-d,(1+√-d)/2,(-1+√-d)/2)

β^-1αに最も近いZ(√-d)の整数γが1未満にあるためには, 

l^2=(√d/2-l)^2+(1/2)^2

  -l√d+(d+1)/4=0

  l=(d+1)/4√d

  d=3のとき,1/√3<1(ユークリッド整域)アイゼンシュタイン整数環

  d=7のとき,2/√7<1(ユークリッド整域)

  d=11のとき,3/√11<1(ユークリッド整域)

以上より,Z(√-d)の整数環がユークリッド整域となるのは,

  d=1,2,3,7,11

の5つの場合に限ります.ユークリッド整域→一意性整域が成り立つは真ですが,逆は成り立ちません.一意分解性をもつが,ユークリッド整域ではないもの(単項イデアル整域)は,

  d=19,43,67,163

に対応するものです.

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