■正三角形の初等幾何学(その14)
三角形の面積は,ヘロンの公式
S=(s(s−a)(s−b)(s−c))^1/2,
s=(a+b+c)/2
で求めることができる.
4辺の長さを与えてもその形は決まらないので,そのような公式は期待できないが,四角形が円に内接するとき,面積は最大値をとり,ブラーマグプタの公式
S=((s−a)(s−b)(s−c)(s−d))^1/2,
s=(a+b+c+d)/2
が成り立つ.
それでは・・・
[Q]円に内接する五角形や六角形についても,ヘロンの公式はあるのだろうか?
[A]存在しないことの証明が
[参]のんびり数学研究会「ガロアに出会う」数学書房
に掲載されている.→コラム「円に内接するn角形の面積」参照
(その6)(その11)(その12)を考えている間に思いついたことであるが,存在しないことのの直観的な理由がわかった.n(≧5)角形で,ヘロンの公式が存在しないことの理由は以下の例と本質的に同値である.
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一般に与えられた三角形の各辺を同じ倍率kで伸縮した位置に点をとって作った三角形の面積は,もとの三角形の面積の
M=3k^2−3k+1=3(k−1/2)^2+1/4
倍になる.
k=1/3 → M=1/3 (3等分)
k=1/2 → M=1/4 (4等分)
k=2/3 → M=1/3 (3等分)
k=1 → M=1
k=2 → M=7 (7等分)
となる.
0<k<1のときはもとの三角形より小さくなり,k=1/2のとき最小値1/4をとる.k>1のときはもとの三角形より大きくなり,k=2のときには7倍になる.
同じく,四角形の各辺を同じ倍率kで伸縮した位置に点をとって作った四角形の面積は,もとの四角形の面積の
M=2k^2−2k+1=2(k−1/2)^2+1/2
倍になる.0<k<1のときはもとの四角形より小さくなり,k=1/2のとき最小値1/4をとる.k>1のときはもとの四角形より大きくなり,k=3/2のときには5/2倍になる.
各辺を同じ倍率kで伸縮した位置に点をとって作った三角形の面積は,もとの図形の三角形小部分の面積のk(k−1)倍になるが,もとの三角形は3重に,もとの四角形は2重に数えられているので,それぞれ,
3k(k−1)+1
2k(k−1)+1
になるというわけである.
しかし,任意のn(≧5)角形では,与えられた図形に数えられない部分が生ずるので,同様の公式は存在しないことになる.
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