■三角形の初等幾何学(その36)
三角形の5心とは内心、傍心、重心、外心、垂心を指しますが、たとえば、三角形の各頂点から対辺に引いた3つの中線や垂線は1点に会するなど、三角形の5心の存在は共点定理の例となっています。このうち、三角形の内心は3辺への距離のうちで一番小さいものが最大となる点(マックスミニ点)、外心は3頂点に至る最大距離が最小となる点(ミニマックス点)です。同様に、垂心は三角形に内接する三角形の周長が最小になる点、重心は3頂点に至る距離の2乗の和が最小となる点です。
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微分積分の入門書に「平面上に3つの定点A,B,Cがある。この平面上に点Pをとって、AP2 +BP2 +CP2 が最小になるようにせよ」という問題が偏導関数の応用例として載せられています。その点Pは重心です。3定点が4定点であっても、同じ議論になるのですが、距離の2乗の和に特に具体的な意味があるようには思えません。むしろ、2乗を取り去ったほうが問題としては自然です。
そこで、「A,B,C3軒の家に電線をひきたい。電線の長さを最小にするにはどこの柱を立てればよいか」ではAP+BP+CPを最小にする実用価値のある問題になります。
求める点Pをフェルマー点といいます。点Pは三角形ABCの内部にありますが、∠A、∠B、∠C<120°のときには、3頂点に至る距離の和が最小となる点は3辺を等角120°に見込む点です。∠A、∠B、∠Cのいずれかが≧120°のときには、それぞれ頂点A、頂点B,頂点Cになります。このような最短配線問題は最小木問題(問題の発案者シュタイナーに因んで最小シュタイナー木問題)と呼ばれていますが、VLSI回路を設計するときの最も基本的な技術となっています。
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本日行われた直観幾何学研究会において、佐藤健治先生(玉川大)が三角形の頂点まで距離のq乗和
Σ|x−P|^q
を最小にする問題を提出された。
q=1の場合がフェルマー点
q=2の場合が重心
q=∞の場合が外心
それでは・・・
[Q]qを変数とするときの点Pが描く曲線は?
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