■ディオファントス・モーデル・マチアセビッチ(その38)
【1】フェルマーの主張(その1)
整数解を要求する2変数1次方程式ax+by=c,2変数2次方程式ax^2+by^2=c(a,b,cは整数)などは,ギリシャのディオファントスにちなんでディオファントスの不定方程式と呼ばれます.
たとえば,y^2=x^3−2の整数解について,ディオファントスはy=t+1,x=t−1とおき,y^2=x^3−2に代入するとt^2+2t+1=t^3−3t^2+3t−3.この式はt(t^2+1)=4(t^2+1)と変形できるので,t=4すなわちy=5,x=3が解であるとしています.
しかし,端的にいって,このような解き方にはアート(技巧)はあってもセオリー(一般的理論)がなく,勘や経験や個々の問題の性質に負っていて,決定打ではありません.問題はこの型の不定方程式に対するすべての整数解,あるいは有理数解を求めることですが,フェルマーは方程式y^2=x^3−2は(x,y)=(3,±5)以外に整数解をもたないということを主張しています.
これについては2次体Q(√2)における整数の素因数分解から導かれますが,次に述べるジーゲルの定理の1例となっています.
===================================
【2】ジーゲルの定理(1929年)
「整数係数の楕円曲線上には整数解が有限個しかない.」
これを証明したのはジーゲルで,その定理はジーゲルの有限性定理(1929年)と呼ばれています.したがって,3次曲線ax^3+by^3=cや楕円曲線y^2=ax^3+bx^2+cx+dなど,3次以上の不定方程式には一般に整数解が有限個しかないことになります.この定理により,すべての2変数多項式の可解性が決定したわけではありませんが,少なくとも2変数2次多項式の可解性条件はわかったことになります.
なお,楕円曲線y^2=x^3−x+9上には±(0,3),±(1,3),±(1,−3),±(9,27),±(35,207),±(37,225),±(46584,10054377)および無限遠点の計15個もの整数点が見つかるとのことです.
===================================
【3】モーデル・ファルティングスの定理(1983年)
1920年,イギリスの数学者モーデルは
ax^4+bx^3z+cz^2y^2+dx^3y+cy^4=0
のように3変数4次不定方程式には整数解が有限個しかない,さらに4次以上何次になってもそうであろうと予想しました(モーデル予想).
変数を複素数の範囲で考えると,楕円曲線y^2=x^3−x+9はトーラス,x^4+y^4−1=0は3重トーラスになるのですが,浮輪の穴の数によって方程式の解の様子が変化していくことをモーデルは予想したのです.
モーデル予想は50年以上にわたって未解決であったのですが,1983年,ドイツの数学者ファルティングスがこの予想を解決しました.
「種数が2以上の代数曲線(超楕円曲線)は有理点を有限個しかもたない.」
===================================