■レイリー・ヴィノグラードフの定理(その1)

レイリー卿(本名ウィリアム・ストラット)はアルゴンの発見により,1904年にはノーベル物理学賞を受けていますが,非常に多彩な研究経歴の持ち主で,物理学の多くの領域で才能をふるったことで知られています.音響工学や光学にも多くの業績を残していますが,それ以外では,たとえば,水面上には油の単分子膜が存在すること,油の分子の直径は約1nmであることを推察しています.19世紀の終わり頃,分子はまだ仮説的な存在であって,いわんや,分子の構造や大きさなどを実験的に測定することは不可能でしたから,大変な慧眼であったというわけです.

===================================

【1】レイリーの定理

 レイリーの定理とは「α,βを1/α+1/β=1を満たす無理数,[]をガウス記号とするとき,2つの数列{an}={[nα]},{bn}={[nβ]}は共通項がなく,併せるとすべての整数1,2,3,・・・を与える.」というものです.

 α≦βとすると,仮定からαは区間(1,2)にあることがわかりますが,たとえば,

  α=(1+√5)/2,β=(3+√5)/2=α+1=α^2

とき,an,bnの値は

n  1  2  3  4  5  6  7  8  9  10

an 1  3 4 6 8 9 11 12 14 16

bn 2 5 7 10 13 15 18 20 23 26

n  11  12  13  14  15  16  17  18  19  20

an 17  19 21 22 24 25 27 29 30 32

bn 28 31 34 36 39 41 44 47 49 52

n  21  22  23  24  25  26  27  28  29  30

an 33  35 37 38 40 42 43 45 46 48

bn 54 57 60 62 65 68 70 73 75 78

n  31  32  33  34  35  36  37  38  39  40

an 50  51 53 55 56 58 59 61 63 64

bn 81 83 86 89 91 94 96 99 102 104

n  41  42  43  44  45  46  47  48  49  50

an 66  67 69 71 72 74 76 77 79 80

bn 107 109 112 115

 これを

n  1  2  3  4  5  6  7  8  9  10

an 1  3 4 6 8 9 11 12 14 16

bn 2 5 7 10 13 15

n  11  12  13  14  15  16  17  18  19  20

an 17  19 21 22 24 25 27 29 30 32

bn 18 20 23 26 28 31

n  21  22  23  24  25  26  27  28  29  30

an 33  35 37 38 40 42 43 45 46 48

bn 34 36 39 41 44 47 49

n  31  32  33  34  35  36  37  38  39  40

an 50  51 53 55 56 58 59 61 63 64

bn 52 54 57 60 62 65

n  41  42  43  44  45  46  47  48  49  50

an 66  67 69 71 72 74 76 77 79 80

bn 68 70 73 75 78

と並べ直すと,2つの数列は共通項がなく,併せるとすべての整数1,2,3,・・・を与えるという意味がおわかり頂けると思います.

===================================