■3次曲面上の27本の直線(その37)

【1】8次元正単体α8と正軸体β8による空間充填形

 二胞角は正単体α8がarccos1/8(82°ほど),正軸体がarccos−3/4(139°ほど)で,

  arcocs(1/4)+2×arcocs(−3/4)=2π

になります.超立方体γ8の90°とは直接関係なさそうです.

 この充填形では各頂点に17280個の正単体と2160個の正軸体が相会しています.実はこの充填形は個々の素片を並べて考えるよりも,対局的に八元整数(ケイリー数の整数)全体のなす格子点をうまく結ぶと,この形の充填形ができることを明記したのが,コクセターの論文:

  Integral Cayley Numbers

  Duke Mathematical Journal, 13(4), 1946

です.彼の選集

  Twelve Geometric Essays (Southern Illinois Univ Press, 1968

に再録されています.

 八元数の表現はいろいろの流儀があり,コンウェイの本「四元数と八元数」(培風館)の記号とも違います.そして内容は大半が八元数の代数的な話ですが,目標は"not easy to prove"という命題:

  任意のケイリー数Xに対して,ノルム(距離の2乗):N(X−G)≦1/2であるケイリー整数Gがある

 これは長らく懸案の課題でしたが,コクセターが図形的に,八元整数全体のなす格子は8次元の正軸体と正単体による空間充填形になっていることを示したので,上記の命題はほぼ自明の事実になりました.「抽象数学」の全盛時代に図形的直観が難問をあっさり解決した例として,当時評判になったようです.

 この格子で特定の1点(原点)からの距離が√nである格子点の個数が

  240σ3(n)   (nの約数全体の3乗の和)

であることや8次元の球の最密充填が1点のまわりに240個で,それがこの形の格子で実現される(しかも本質的に一通り)などもわかっております.

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