■ポンスレーの不定命題の不変量(その2)

【2】リンク機構とグレブナー基底

 複数の棒を互いに結合してできる連接棒を「リンク装置」と呼びます.連接棒の一点を直線や曲線に沿って動かすとき,複雑な変化のある曲線を描くことができます.たとえば,ジェームズ・ワットのリンケージは蒸気エンジンのピストンロッドなどに実用化されています.また,ポースリエの反転器は円運動を直線運動に,直線運動を円運動に変換する機構で,リンク装置の用途は多方面にわたっています.

 ところで,連結クランク上の点の軌跡は,一般的な形の多項式

  f(x)=c+Σricos(δi)

  g(y)=c+Σrisin(δi)

に書き換えることができますが,これを数式処理ソフトのグレブナー基底計算プログラムを用いて,代数曲線φ(x,y)=0として表すことができます.

 ここでは,平面上で回転できる関節を考えましたが,さらに,回転と同時に伸縮も可能な関節を考えます.すると,オイラー・フースの定理の拡張版は,連立方程式

  xicosθi+yisinθi=ci   (ヘッセの標準形)

  xi^2+(yi−ci)^2=γi^2

のグレブナー基底を計算することによって得られることがわかります.

[1]n=5の場合

 内接円の中心を原点にとる.外接円との交点をA(x1,−r),B(x2,y2),C(0,R+d)とすると,

  x1cosθ−rsinθ=r

  x2cosθ+y2sinθ=r

  x2cosφ+y2sinφ=r

  (R+d)sinφ=r

 また,外接円の中心O(0,d)と点A,点Bとの距離の2乗はR^2となることより

  x1^2+(r+d)^2=R^2

  x2^2+(y2−d)^2=R^2

[2]n=6の場合

 内接円の中心を原点にとる.外接円との交点をA(x1,−r),B(x2,y2),C(x3,r)とすると,

  x1cosθ−rsinθ=r

  x2cosθ+y2sinθ=r

  x2cosφ+y2sinφ=r

  x3cosφ+rsinφ=r

 また,外接円の中心O(0,−d)と点A,点B,点Cとの距離の2乗はR^2となることより

  x1^2+(r−d)^2=R^2

  x2^2+(y2+d)^2=R^2

  x3^2+(r+d)^2=R^2

 θとφを消去するにはどうしたらよいか? 実はこれらに対しては,単純にグレブナー基底を計算せよというコマンドを入力することによって,次の結果が得られた.

[1]双心五角形

  d^6−2d^4rR+8d^2r^3R−3d^4R^2−4d^2r^2R^2+4d^2rR^3+3d^2R^4+4r^2R^4−2rR^5−R^6=0

[2]双心六角形

  3d^8−4d^6r^2−12d^6R^2+4d^4r^2R^2−16d^2r^4R^2+18d^4R^4+4d^2r^2R^4−12d^2R^6−4r^2R^6+3R^8=0

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