■行列式の計算(その15)
(その14)ではミンコフスキーの第1格子点定理,第2格子点定理を取り上げた.ところで,ロボット工学の分野においてはロボットアームの設計や制御,障害物回避問題などが一つの重要な研究対象になっているのだが,障害物回避動作を最適に制御するためには図形のミンコフスキー和をコントロールしなければならない.
ミンコフスキー和A+Bは図形Aを構成する点の位置ベクトルと図形Bを構成する点の位置ベクトルの和全体がなす図形であり,一方の図形の原点がもう一方の図形の境界上を一周するように平行移動させたときにできる和集合である.(いろいろな使い道があるものだと感心したのだが)ロボットの原点が踏み込んではならない領域を表すのに応用することができる.
日本の国土をA,半径rの円板をBとして,陸地の各点にこの円板を貼り付けることによって定まる領域がA+Bである.すなわち,陸地からの距離がr以下の海の部分を陸地に加えた領域がミンコフスキー和A+Bである.今回のコラムでは,A,B,A+Bの3つの面積の関係を述べたブルン・ミンコフスキーの不等式を紹介する.
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【1】ブルン・ミンコフスキーの不等式
冒頭では平面での場合を述べたが,一般のn次元図形に対しても不等式
|A+B|^1/n≧|A|^1/n+|B|^1/n
が成立する(平面図形の場合はn=2).等号成立はAとBは相似の位置にあるか,またはAはBの平行移動であるときである.
また,2つの凸図形K0,K1が与えられたとき,K0からK1への連続変形
Kt=(1−t)K0+tK1 (0≦t≦1)
においては
|Kt|^1/n≧(1−t)|K0|^1/n+t|K1|^1/n
が成り立つ.
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【2】凸体の点対称化
凸体Kを原点の周りで180°回転させて得られる図形を−Kあるいはrot(K)で表す.Kに対して点対称化図形K~を
K~=1/2(K+(−K))
で定義する.図形−Kの原点を図形Kの境界に沿って動かすときのミンコフスキー和であるが,前述した−KからKへの連続変形のt=1/2の場合であり,図形Kが四角形のときK~は八角形,Kが四面体のときK~は立方八面体状図形になる.
このとき,
|K|≦|K~|
が成り立つ(等号成立は−KがKの平行移動であるとき).
また,Kが2次元図形であれば周長と直径は不変である.
L(K)=L(K~),D(K)=D(K~)
3次元図形であれば直径は不変である.
D(K)=D(K~) (表面積は不変ではない)
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