■行列式の計算(その12)

【3】重要なグラフのスペクトル

 行列と固有値,グラフとそれを表す固有値との間には密接な関係がある.冒頭のグラフ例で説明するが,グラフGのスペクトルを重複度を含めて

  Spec(G)=[ √2, 0,−√2]

          [ 1,  1,  1]

と表すことにする.

(1)完全グラフ:位数kのグラフでどの2点も隣接しているとき完全グラフという.それには正k角形+すべての対角線をイメージすればよく,v=k,e=kC2である.その隣接行列は

    [0,1,・・・,1,1]

    [1,0,・・・,1,1]

  B=[・・・・・・・・・・・]

    [1,1,・・・,0,1]

    [1,1,・・・,1,0]

したがって,固有多項式は

    |λ,−1,・・・,−1,−1|

    |−1,λ,・・・,−1,−1|

  Φ=|・・・・・・・・・・・・・・|

    |−1,−1,・・・,λ,−1|

    |−1,−1,・・・,−1,λ|

となる.

 これは巡回行列式であるから,ζを1の原始k乗根(すなわちk乗してはじめて1になる複素数)とすると

  Φ=Π(λ−ζ^i−・・・−ζ^(k-1)i)  (i=0~k-1)

で表される.(i=0~k-1)であるから右辺はk個の整式の積となり,Φ=0はλに関するk次方程式となる.このことより

  Spec(G)=[k−1, −1]

          [ 1 ,k−1]

が得られる.

(2)閉路グラフ:正k角形をイメージすればよく,v=k,e=kである.その隣接行列は

    [0,1,0,・・・,0,1]

    [1,0,1,・・・,0,0]

  B=[0,1,0,・・・,0,0]

    [・・・・・・・・・・・・・]

    [1,0,0,・・・,1,0]

したがって,固有多項式は

    |λ,−1,0,・・・,0,−1|

    |−1,λ,−1,・・・,0,0|

  Φ=|0,−1,λ,・・・・,0,0|

    |・・・・・・・・・・・・・・・|

    |−1,0,0,・・・,−1,λ|

となる.

 これも巡回行列式であり,

  Spec(G)=[2cos(2πi/k)]

          [    1      ]   (i=0~k-1)

(3)道: 1 2 3・・・・・k−1 k

    ・−・−・−・−・−・−・−・

 この隣接行列は

    [0,1,0,・・・,0,0]

    [1,0,1,・・・,0,0]

  B=[0,1,0,・・・,0,0]

    [・・・・・・・・・・・・・]

    [0,0,0,・・・,1,0]

したがって,固有多項式は

    |λ,−1,0,・・・,0,0|

    |−1,λ,−1,・・,0,0|

  Φ=|0,−1,λ,・・・,0,0|

    |・・・・・・・・・・・・・・|

    |0,0,0,・・・,−1,λ|

となる.

 3重対角行列式より,

  Spec(G)=[2cos(2πi/(k+1))]

          [      1        ]   (i=0~k-1)

(4)完全2部グラフ:位数p対位数qの総当たりをイメージしてもらいたい.結果だけ書くと

  Spec(G)=[ √pq, 0,  −√pq]

          [ 1,  p+q−2,  1]

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