■行列式の計算(その11)

グラフの隣接行列では結ぶ辺の有無を(0,1)で表したものが一般的である.すなわち,

  結ぶ辺があるとき・・・1

  結ぶ辺がないとき・・・0

  それ自身のとき・・・・0

である.

 たとえば,

  1 3 2

  ・−・−・

のようにラベルしたグラフの隣接行列は

    [0,0,1]

  B=[0,0,1]

    [1,1,0]

となる.(1,2)要素は0であるから1←→2を結ぶ道はないが,(1,3)は1であるから1←→3を結ぶ道が存在するというわけである.また,それ自身のとき0であるから,主対角線要素はすべて0となる.このようにグラフは行列の形で表現できるので,グラフ論は行列論とみなすこともできるのである.

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【2】隣接行列の固有値

 位数kのグラフの固有値は隣接行列の固有値,すなわち,固有多項式

  Φ=det(λI−B)=0

の解λで与えられる.冒頭に掲げたグラフの固有多項式は

    | λ, 0,−1|

  Φ=| 0, λ,−1|=λ^3−2λ

    |−1,−1, λ|

で,固有値は0,±√2と計算される.

 グラフに異なるラベルを付けても固有値は同じになる.

  1 2 3

  ・−・−・

のようにラベルしたグラフの隣接行列は

    [0,1,0]

  B=[1,0,1]

    [0,1,0]

となるから

    | λ,−1, 0|

  Φ=|−1, λ,−1|=λ^3−2λ

    | 0,−1, λ|

 固有値λはすべて実数でその和は0となる.

  Σλi=0

また,グラフが連結なとき,最大次数をΔとすると

  |λ|≦Δ

となる.冒頭の例ではΔ=2である.

 また,隣接行列Bの固有値をλ1,・・・,λkとすると,B^nの固有値は

  λ1^n,・・・,λk^n

となる.このことから長さnの道の数は

  tr(B^n)=Σλi^n

であることがわかる.

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