■ディリクレの鳩(その75)

【1】ABC定理(メーソン・ストーサーズ定理)

  A=P1^e1P2^e2・・・Pr^erのとき,相異なる素因子すべての積を

   radA=P1P2・・・Pr

と定義する.

 どの2つも互いに素ばA,B,Cが,A+B=Cを満たすとき

  max(degA,degB,degC)<deg(radABC)

が成り立つ.

===================================

【2】ビール予想(タイデマン・ザギエ予想)

  x^p+y^q=z^r

たとえば,1^n+2^3=3^2(カタラン),2^5+7^2=3^4,7^3+13^2=2^9,2^7+17^3+71^2,3^5+11^4=122^2,17^7+76271^3=21063928^2,1414^3+2213459^2=65^7,9262^3+15312283^2=113^7,13^8+96222^3=30042907^2,33^8+1549034^2=15613^3などの指数p,q,rのどれかは2である.

  x,y,zのどの2つも互いに素,p,q,rha3以上ならば,x^p+y^q=z^rを満たすものは存在しない

===================================

【3】abc予想

  a=p1^e1p2^e2・・・pr^erのとき,相異なる素因数すべての積を

   rada=p1p2・・・pr

と定義する.たとえば,

  rad(19800)=rad(2^33^25^211)=2・3・5・11

 しかし,ABC定理の類似:どの2つも互いに素ばa,b,cが,a+b=cを満たすとき

  max(|a|,|b|,|c|)<rad(abc)

は成り立たない.たとえば,反例(カタラン)

 (a,b,c)=(1,8,9)

  max(|a|,|b|,|c|)=9

  rad(abc)=6

 そこで,条件を緩めた

  max(|a|,|b|,|c|)<(rad(abc))^N

なる整数(>1)が存在する

には反例も証明も知られていない.もし,abc予想が成り立つならば,n>3Nに対するフェルマーの定理

  x^n+y^n=z^n

も成り立つ.

 また,望月新一先生解決したと述べているのは,これを精密化した

  max(|a|,|b|,|c|)<(rad(abc))^κ

は有限集合であるという,エステルレ・マッサー予想である.κ=1は無限集合であり,κ=1.5は13,κ=1.6は3つ,κ=2はひとつも知られていない.

===================================