■ディリクレの鳩(その73)

 2012年8月,望月新一先生(京都大学)がabc予想の証明をしたとのニュースが流れた.abc予想とは方程式a+b=cをみたす互いに素な自然数a,b,cについて,cを積abcの素因子成分によって上から抑えるという不等式予想である.

 現在この検証が進んでいる.これが成立するとフェルマー・ワイルズの定理やモーデル・ファルティングスの定理を簡単に証明(別証)することができるという.また,abc予想が完全に解決されれば,イェスマノヴィッツ予想も高々有限個の組(a,b,c)を除いて肯定的に解決される.

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【1】イェスマノヴィッツ予想

 (a,b,c)をピタゴラス数で,a^2+b^2=c^2を満たすものとする.このとき,

  a^x+b^y=c^z

を満たす正の整数組(x,y,z)は(2,2,2)のみである.

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 (a,b,c)=(3,4,5)の場合はシェルピンスキによって証明された(19955年).同年,イェスマノヴィッツがこの予想を提唱し,(a,b,c)=(5,12,13),(7,24,25),()9,40,41),(11,60,61)の場合を証明した.しかし、現時点では予想が一般に正しいかわかっていない.

 (a,b,c)をひとつ固定したとき,(x,y,z)が有限個しかないことはモーデル・ファルティングスの定理を使って証明できる.しかし,会が有限個あると会がひとつしかないの間には雲泥の差があるのである.

[補]アルティンの原始根予想,すなわち,aを原始根にもつ素数は無限個存在するという予想は,一般化されたリーマン予想を仮定すれば成立することがわかっている.また,アルティンの原始根予想の関数体版はすでに証明されている.

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