■ディリクレの鳩(その60)

  a=p1^e1p2^e2・・・pr^erのとき,相異なる素因数すべての積を

   rad(a)=p1p2・・・pr

と定義する.たとえば,

  rad(19800)=rad(2^33^25^211)=2・3・5・11

  rad(36)=rad(2^23^2)=2・3

  rad(72)=rad(2^33^2)=2・3

  rad(20)=rad(2^25)=2・5

  rad(90)=rad(23^25)=2・3・5

  rad(56)=rad(2^37)=2・7

 しかし,ABC定理の類似:どの2つも互いに素ばa,b,cが,a+b=cを満たすとき

  max(|a|,|b|,|c|)<rad(abc)

は成り立たない.たとえば,反例(カタラン)

 (a,b,c)=(1,8,9)

  max(|a|,|b|,|c|)=9

  rad(abc)=6

 そこで,条件を緩めた

  max(|a|,|b|,|c|)<(rad(abc))^N

なる整数(>1)が存在する

には反例も証明も知られていない.もし,abc予想が成り立つならば,n>3Nに対するフェルマーの定理

  x^n+y^n=z^n

も成り立つ.

 また,望月新一先生解決したと述べているのは,これを精密化した

  max(|a|,|b|,|c|)<(rad(abc))^κ

は有限集合であるという,エステルレ・マッサー予想である.κ=1は無限集合であり,κ=1.5は13,κ=1.6は3つ,κ=2はひとつも知られていない.

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