■反例集(その18)

【1】面数最大の空間充填多面体の反例

 平行多面体とは辺が平行(したがって平行四辺形面,平行六辺形面に限られる),面が平行,そして平行移動するだけで3次元空間を埋めつくすことのできる単独の多面体である.フェドロフは平行多面体には立方体,6角柱,菱形12面体,長菱形12面体,切頂8面体の5種類しかないことを証明した.

 これら5種類の図形(フェドロフの平行多面体)は3次元格子の幾何学的分類であって,5種類の正多面体(プラトン立体)ほどよく知られていないが,少なくとも同じ程度に重要であると考えられる.

 このうち14面多面体は切頂8面体だけであるが,切頂八面体には6組の平行な辺があり,6次元立方体と相同と考えることができる.切頂8面体(f=14,d=6)の辺を点に縮めることによって,長菱形12面体(f=12,d=5)→菱形12面体(f=12,d=4),6角柱(f=8,d=4)→立方体(f=6,d=3)ができる.すなわち,6角柱,菱形12面体は4次元立方体,長菱形12面体は5次元立方体,切頂8面体は6次元立方体を3次元空間に投影したものとなっていて,空間充填図形の基本形は切頂8面体と考えることができる所以である.

また,n次元空間充填では,各頂点の周りに少なくともn+1個の多面体が集まる(ルベーグの舗石定理).そして,ミンコフスキーはn+1個のとき,タイル(space filler)の面数は最大2(2^n−1)個をもつことを証明した.

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 長い間,2(2^n−1)がn次元空間充填多面体の面数の上限であると信じられてきた.すなわち,3次元空間充填多面体の面数の上限は14面であり,14面以上の面をもつことは不可能であると・・・.

 しかし,平行移動のほかに回転や鏡映操作も許せば,さらに多くの多面体が空間充填可能となる.

[1]Foepplの16面体(1914年)

 正四面体は単独では空間充填できない.また,正四面体の辺の3等分点で切頂すると切頂四面体となるが,切り取った小正四面体を各面と底面として中心から四等分するとマラルディの角が現れる.この三角錐片の二面角が120°である.そして,その三角錐片を切頂四面体の切頂面に載せた形は単独で空間充填し得るようになる.

[2]Loeckenhoff and Hellnerの18面体(1941年)

 Foepplの16面体はダイヤモンド格子を下にして設計されたものであるが,それをひねるとこのような18面体になる.これは4軸構造=K4格子に対応するものである.

[3]Engelの38面体(1980年)

 エンゲルは38面をもつタイル(space filler)をいくつか作った.ちなみに現在は4≦f≦38であるすべてのfに対し,空間充填可能な凸f面体が存在することが判明している.38より大きい面数のタイルは存在するだろうか? また,面数に上限はあるだろうか?

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