■ディリクレの鳩(その6)
【4】フルヴィッツ・ボレルの定理
|α−p/q|<1/q^2
の右辺はこの定数倍でもよく,ディリクレの定理の精度を2倍に強めても,近似分数は無限個見つかる.
|α−p/q|<1/2q^2
たとえば,πの連分数展開は
π=[3:7,15,1,292,・・・]
これから,近似値
3,22/7,333/106,355/113,103993/33102,・・・
が得られる.
|π−22/7|<1/2(7)^2=0.01
|π−335/113|<1/2(113)^2=0.00039
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|α−p/q|<1/2q^2
は指数が2次の近似であるが,指数2ではなく,この定数2は無理数の種別によっては最良のものではない.たとえば,αが2次の無理数のとき,
|α−p/q|<1/√5b^2
を満たす有理数p/qは無限に多く存在する.一方,λ>√5に対しても
|α−p/q|<1/λb^2
を満たす有理数p/qが有限個しかない無理数αが存在する.
すべての無理数のなかで,最も有理近似を嫌う数は黄金比
φ=(1+√5)/2=[1:1,1,1,・・・]
である.
λ=[1:1,1,1,・・・]+[0:1,1,1,・・・]=φ+1/φ=√5
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黄金比φに対しては,この定数√5は最良のもので,これより大きな数に置き換えることはできないが,黄金比φのようにαの連分数展開が有限個を除いてすべて1になる無理数
α=[a0:a1,a2,・・・,ar,1,1,1,・・・]
を除外すれば,√5の代わりに√8を用いても成り立つ.
λ=[2:2,2,2,・・・]+[0:2,2,2,・・・]=1+√2+1/(1+√2)=√8
|α−p/q|<1/√8b^2
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次に問題になるのは
√2=[1:2,2,2,・・・]
1+√2=[2:2,2,2,・・・]
のようなαの連分数展開が有限個を除いてすべて2になる無理数で,それを除くと定理を
λ=[2:2,1,1,2,2,1,1,・・・]+[0:1,1,2,2,2,1,1,2,2,・・・]=(9+√221)/10+(−9+√221)/10=√(221/25)
|α−p/q|<1/√(221/25)b^2
に改良できる.
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同様の改良を続けていったときの定数√5,√8,√(221/25),・・・がラグランジュ数である.それらは
√(9−4/m^2)
において,それぞれm=1,2,5とおいたものである.結果として得られる数は3に収束する.
|α−p/q|<1/λb^2
のλは3より小さくすることはできない.
m=1,2,5,13,29,34,89,169,194,233,433,610,985,・・・
はマルコフ数と呼ばれる.マルコフ数は2次のディオファントス方程式
x^2+y^2+z^2=3xyz
の解として現れる,大いに興味をかき立ててきたディオファントス方程式である.たとえば(x,y,z)=(1,1,1),(2,1,1),(5,1,2),(13,1,5),(29,5,2),・・・
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