■コーヒー・定理変換装置(その8)

[1]平面上に5つの点をどう配置しても必ず凸四角形をなす4点を選ぶことができる.

[2]平面上に9つの点をどう配置しても必ず凸五角形をなす5点を選ぶことができる.

[3]平面上に17の点をどう配置しても必ず凸六角形をなす6点を選ぶことができる.

 しかし,なぜ常にそうなるのか本質的な理由はまだ解明されていない.それならば,次の問題はどうだろうか?

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【1】デルタ多面体

 すべての面が正三角形で構成されている立体をデルタ多面体(正三角面体)といいます.正4面体,正8面体,正20面体は正三角形だけから作られる正多面体ですが,このほかに5種類,計8種類の凸デルタ多面体を作ることができます.

 結論を先にいうと,正3角形ばかりを集めると4面体から20面体まで,18面体以外の8種類すべての偶数多面体ができあがります.そのうち,正4面体,正8面体,正20面体は正多面体にも分類されるのですが,デルタ多面体はそれらを含めて全部で8種類あることがわかりました.逆にいうと,もし多面体の各面が正三角形ならば8つの多面体の中のどれかひとつであるということになります.

 同様に,正方形1種類では立方体のみ,正5角形1種類では正12面体のみが得られ,正6角形以上の正多角形ばかりでは凸多面体はできません.結局,1種類の正多角形でできる凸多面体は合計10種類あることになります.

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 3次元凸多面体の頂点,辺,面の数をそれぞれv,e,fとすると,

  v−e+f=2  (オイラーの多面体定理)

が成り立ちます.これは3次元立体について,0次元の特性数であるv,1次元の特性数であるe,2次元の特性数であるfの関係を述べたものと解釈され,最も美しい数学の10大定理の1つに挙げられるものです.

 また,正則な多面体とはその面が正多角形で,どの面にも同じ数の面が集まっている凸多面体のことで,正多面体では

  pf=2e,qv=2e

でしたが,正則とは限らない一般の多面体では

  Σpi=p1+・・・+pf=2e,

  Σqi=q1+・・・+qv=2e

となります.

 pi=3,3≦qi≦5ですから

  3f=2e   (fは偶数)

  3v≦2e≦5v

これをオイラーの多面体定理

  v−e+f=2

に代入すると

  6≦e≦30

 これより

  4≦f≦20,(3≦v≦20)

が得られます.3f=2eよりfは偶数ですから,4面体から20面体までの偶数多面体がデルタ多面体の候補となります.

   f      e      v

   4      6      4

   6      9      5

   8     12      6

  10     15      7

  12     18      8

  14     21      9

  16     24     10

  18     27     11

  20     30     12

 オイラーの多面体定理によってそれ以外にはないことを証明することができましたが,1942年,フロイデンタールによってデルタ18面体は存在しないことが証明されました.

 ところで,f=18(v=11)が十分条件を満たさないことはどのようにして証明されるのでしょうか? この点について一松信先生にうかがったのですが,この証明は殊の外厄介ということでした.それは凸多面体という条件がつくためなのですが,結局は頂点数11の形を分類してどのような組でも凸体にならないことを確かめるという手間を要します.

 f=18の不可能性の証明は端的にいって「あらゆる可能性を調べて凸体にならない」ことを示すような厄介な話です.オイラーの士官36人の問題の不可能性の証明などもその1例です.

 なお,「ポリドロン」には辺の長さの等しい正3角形,正4角形,正5角形,正6角形のユニットがあります.ポリドロンによるf=18の模型を掲げますが,凸体に近いものの凸でない多面体ができあがりました.同じf=18を2つの方向から見た図を掲げます.

 この構成では

  佐藤耕太郎(当時小学6年生),佐藤一麦(当時小学4年生),佐藤千種(当時2才)

の協力を得ました.「ポリドロン」は東京書籍がその取り扱い店となっています.→連絡先:tel:03-5390-7513,fax:03-5390-7409(大山茂樹)

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