■サッカーボールの平和的利用(その23)

【1】フラーレン

 フラーレンは60個の炭素からなるサッカーボール構造(切頂20面体)をもつ分子である.ドーム建築で有名なフラーにちなんでいる。

 1985年に,クロト,スモーリー,カール(Kroto,Smalley,Curl)がグラファイトにレーザーを当ててできた欠片をマススペクトルにかけたところ分子量が720(C60)と840(C70)という値が得られその存在が確認された.彼らはネイチャー誌に論文を書いてサッカーボールの画を載せた.(その後,数mg〜数百mgのフラーレンが得られる製法が開発され,NMRで間違いなくサッカーボールの形であることが証明された.)

 彼らの論文はサッカーボールの形を推定しただけであるが,1996年この3人がノーベル化学賞をもらった。

 その後,サッカーボール型のC60だけでなく、ラグビーボール型のC70,金属を内部に取り込んだC80などが次々に発見され,これら一群の球状炭素分子はフラーレンと総称される.

 フラーレンはダイヤモンドに次ぐくらい硬く,セシウムやルビジウムなどのアルカリ金属を加えると超伝導をおこすという化学的性質をもつ.切頂20面体は頂点が60あり,どの頂点からも3本の手がでている.したがってC60では30本の二重結合(12500のケクレ構造)が描ける.また,異性体は1812種類もあり,そのうちで12個の五角形がすべて離れているものが1つだけあり,それがサッカーボール型のC60である.この形は最も安定であるが,C60,C70以外にも正五角形12枚,正六角形は20枚〜100枚以上の0次元ダイヤモンドが知られている.

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