■お化けペンタグラム(その1)

 三方向から見て,○△□に見える図形は何か?という問題がある.これに対しては,○△□の平面を組み合わせればよい.それに肉付けした図形,たとえば,円柱を山形に切った図形も答えとなる.

 見る方向によって○△□にみえる図形はよく知られているが,△□五角にみえる図形はどうだろうか? そのような図形は正三角柱,正四角柱,正五角柱を重ね合わせて,その積集合をとることによって構成することができる.

 12面体となるお化け多面体の例が

  細矢・宮崎「多角形百科」丸善,65ページ

に掲げられている.しかし、それよりも興味を惹かれるのが乙部融朗住職のお化けペンタグラムである。

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 正五角形に対角線を描き入れると星形五角形(ソロモンの星)ができる.正五角形と星形五角形の入れ子はペンタグラムと呼ばれ,ピタゴラス派のシンボルマークであったことはよく知られている.

 星形五角形の内部にはもとの正五角形を天地逆転させた小さな正五角形ができる.その中にまた星形五角形を作ると再び順方向の正五角形ができる.このように正五角形は無限に続く入れ子構造を有している.この入れ子構造の背後には黄金比が潜んでいる.黄金比は興味深い数であって,フィボナッチ数列とも密接な関係があることはご存知であろう.

 20年ほど前に東京都荒川区南千住の乙部融朗住職(円通寺)を訪問した際,4次元正5胞体を3次元空間内に直投影した立体模型をみせていただいたことがある.この模型の写真は

  石井源久・山口哲「高次元図形サイエンス」,京都大学学術出版会

の83ページに掲載されているので,ご存知の方もおられると思う.

 4次元正5胞体を2次元平面上に直投影すると,その外形は正三角形,正方形,正五角形など様々に変化する.とくに正五角形に中にすべての対角線を入れた図はペンタグラムそのものとなるから,4次元正5胞体を3次元空間内に直投影した立体図形は立体ペンタグラムということになろう.それにしても乙部住職はどうやって立体ペンタグラムを製作したのだろうか?

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