■分割数の漸近挙動(その107)
【1】ラマヌジャンの分割数(保型形式論の端緒)
ラマヌジャンは,重さ12の保型形式
Δ(z)=qΠ(1-q^n)^24=q{(1-q)(1-q^2)(1-q^3)・・・}^24
=Στ(n)q^n=τ(1)q+τ(2)q^2+τ(3)q^3+・・・
zは虚部が正の複素数で,q=exp(2πiz)
を考え,その係数τ(n)を計算しました.この式は楕円関数に関する深淵な研究に由来しています。
Δ=q−24q^2+252q^3−1472q^4+4830q^5−6048q^6−16744q^7+84480q^8−113643q^9+・・・
τ(1)=1,τ(2)=-24,τ(3)=252,τ(4)=-1472,τ(5)=4830,τ(6)=-6048,
τ(7)=-16744,τ(8)=84480,τ(9)=-113643,τ(10)=-115920,
τ(11)=534612,τ(12)=-370944,・・・
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τ(n)はオイラーの分割数のアナローグであり,ラマヌジャン数と呼ばれます.τ(n)は,(m,n)=1すなわちmとnが素ならば,
τ(mn)=τ(m)τ(n)
という乗法的性質をもっています.
τ(2)*τ(3)=-6048=τ(6),τ(2)*τ(5)=-115920=τ(10)
τ(3)*τ(4)=-370944=τ(12),τ(2)*τ(9)=2727432=τ(18)
τ(4)*τ(5)=-7109760=τ(20),τ(3)*τ(7)=-4219488=τ(21)
τ(p^(n+1))-τ(p^n)τ(p)=-p^11τ(p^(n-1)) (漸化式)
τ(6)=τ(2)τ(3)
τ(10)=τ(2)τ(5)
τ(4)=τ^2(2)−2^11
τ(8)=τ(2)τ(4)−2^11τ(2)
τ(9)=τ^2(3)−3^11
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1919年、モーデルがこれらの公式を証明しました。
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1916年,ラマヌジャンは,ラマヌジャン関数
Δ(z)=qΠ(1−q^n)^24=Στ(n)q^n
q=exp(2πiz)
に対するゼータ関数について考え,ある予想をたてました.
ラマヌジャン数のゼータ,すなわち,
L(s)=Στ(n)n^(-s)
とおくと,オイラー積のアナローグである
L(s)=Π{1-τ(p)p^(-s)+p^(11-2s)}^(-1)
が成り立つことを予想したのです.
歴史上最初のゼータであるオイラー積
ζ(s)=Σn^(-s)=Π(1−p^(-s))^(-1)
は積の中身がp^(-s)の1次式であり,本質的には1次のゼータでしたが,L関数ではp^(-1)の1次式から2次式に進化しているのです.ラマヌジャン数のゼータは,歴史上最初の2次のゼータといえるのですが,新種のゼータに関するこの予想は,翌年,モーデルによって証明されました(1917年).
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