■分割数の漸近挙動(その103)

【7】ロジャース・ラマヌジャンの分割恒等式の母関数

 母関数は一見手も足も出せそうもない関数をひとまとめにしてうまく処理するための常套手段のひとつです.ここで,母関数についてまとめておきましょう.

(1)因子が相異なる分割の母関数はΠ(1+x^n)

(2)同じ因子が高々d回しか現れない整数nの分割の個数の母関数は

  Σs(n)x^n=Π(1+x^n+x^2+・・・+x^dn)=Π(1-x^(d+1)n)/(1-x^n)

(3)また,同じ因子が何回でも繰り返し現れる分割ではd→∞とすればよいから,母関数はΠ1/(1-x^n)

 また,分割に含まれる因子の個数情報を母関数から引き出したくなる場合もあります.そのようなときには2変数母関数のほうが便利です.それぞれ

(1)Π(1+zq^n)

(2)Π(1-z^(d+1)q^(d+1)n)/(1-zq^n)

(3)Π1/(1-zq^n)

となります.

 ロジャーズ・ラマヌジャンの第1恒等式の母関数は

  Σq(n)x^n=Π1/(1-x^(5n-4))(1-x^(5n-1)

第2恒等式では

  Σq(n)x^n=Π1/(1-x^(5n-3))(1-x^(5n-2)

となるのですが,q2項係数とヤコビの3重積公式を用いて,ロジャーズ・ラマヌジャンの恒等式を証明することができます.

 ロジャース・ラマヌジャン恒等式にはやさしい証明は存在せず,q二項係数とヤコビの三重積公式を使って証明されるのです.

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