■分割数の漸近挙動(その102)
【6】オイラーの五角数定理
ある恒等式が分割の立場から何を意味するかという逆問題を考えてみましょう.
1/(1-x)=1+x+x^2+x^3+x^4+・・・
=(1+x)(1+x^2)(1+x^4)(1+x^8)・・・
において,1+x+x^2+x^3+x^4+・・・の指数は整数そのものの母関数と考えられます.一方,(1+x)(1+x^2)(1+x^4)(1+x^8)・・・は整数を繰り返しなしで2のベキに分解しています.したがって,各整数は2のベキの総和として一意に表せることを意味しているのです.
n=k1+2k2+2^2k3+・・・
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ところで,オイラーの分割関数の分母
g(x)=Π(1-x^n)
に関してオイラーが発見した定理をもう一つ紹介しておきましょう.
分割数p(n)の母関数の逆数
Π(1-x^n)=(1-x)(1-x^2)(1-x^3)・・・
を考えます.これを展開すると,級数中の係数がすべて0か±1の級数
Π(1-x^n)=1-x-x^2+x^5+x^7-x^12-x^15+x^22+x^26-x^35-x^40+x^51+・・・
=Σ(x^(6m^2-m)-x^(6m^2+5m+1))
が得られますが,これが何を意味しているかを発見できるでしょうか?
一見したところ,何を意味しているのかすら明らかではないのですが,この級数は,mが負になる項も含んだ
Π(1-x^n)=Σ(-1)^mx^(m(3m-1)/2))
の形にまとめられ,ここで指数の引数がm(3m−1)/2,すなわち,1,5,12,22,35,51,・・・という数列がピタゴラスの五角数であることから,五角数定理と呼ばれています.
この恒等式は,級数中のx^nの係数がすべて0か±1なのですが,組合せ論の解釈から,偶数個の異なる整数への分割数と奇数個の異なる整数への分割数の差
Peven(n)-Podd(n)=(-1)^m n=m(3m+1)/2
Peven(n)-Podd(n)=0 その他の場合
を表すものと考えられます.
たとえば,n=8の場合,偶数個の異なる整数への分割は7+1=6+2=5+3の3通り,奇数個の異なる整数への分割は8=5+2+1=4+3+1の3通りですから,その差は0となります.n=5の場合,偶数個の異なる整数への分割は4+1=3+2の2通り,奇数個の異なる整数への分割は5の1通りですから,その差は1となります.
個数の差があるのはn=m(3m+1)/2またはn=m(3m−1)/2,すなわち,
n=1,2,5,7,12,15,22,26,・・・
の場合で,このn=m(3m±1)/2を5角数といいます.nが5角数の場合に限ってPeven(n)とPodd(n)が異なるのですが,五角数は分割問題でも役立つというわけです.
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もう一度,オイラーの5角数定理についてまとめておくと,ある種の数に対する補正項をe(n)とおいて
#{偶数個の異なる整数への分割}=#{奇数個の異なる整数への分割}+e(n)
ここで,e(n)=(-1)^j n=j(3j±1)/2
e(n)=0
オイラーの5角数定理を用いると,分割関数に対する再帰関係式
Σp(n-j(3j±1)/2)(-1)^j=0
p(n)=p(n-1)+p(n-2)-p(n-5)-p(n-7)+p(n-12)+・・・
が得られます.これより
p(0)=1,p(1)=1,p(2)=2,p(3)=3,p(4)=5,p(5)=7,p(6)=11,
p(7)=15,p(8)=22,p(9)=30,p(10)=41,p(11)=56,p(12)=77,・・・
を効率的に計算することができます.
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