■分割数の漸近挙動(その101)
【5】オイラーの分割恒等式
オイラーの分割恒等式が任意の正の整数に対して成り立つことをどうやって示すか,そのための基本的アイディアが母関数を用いることです.nをすべて異なる数に分割する仕方について考えましょう.
この場合の母関数は,各整数を高々1回,繰り返すことなく取ることになるますから,制限のない場合の母関数
f(x)=(1+x+x^2+・・・)(1+x^2+x^4+・・・)(1+x^3+x^6+・・・)・・・
の因数を1以外に1つの項だけもつようにすればよい,したがって,
f(x)=(1+x)(1+x^2)(1+x^3)・・・
となることがわかります.
また,この母関数は
(1+x)(1+x^2)(1+x^3)・・・
=(1-x^2)/(1-x)・(1-x^4)/(1-x^2)・(1-x^6)/(1-x^3)・・・
=1/(1-x)(1-x^3)(1-x^5)・・・
と書き換えることができます.
これは奇数の整数への分割に対応する母関数であることがわかります.すなわち,
q(n):nの奇数のみを用いた分割の総数
r(n):nの互いに異なる数を用いた分割の総数
とすると
Σq(n)x^n=1/(1-x)(1-x^3)(1-x^5)・・・
Σr(n)x^n=(1+x)(1+x^2)(1+x^3)・・・
であり,両者の母関数は一致します.
こうして,異なる数への分割と奇数への分割が同数あるという注目すべき結果を得ることができたのですが,もし,物理状態がn個の基本粒子の分割に関係しているとすると,相異なる分割と奇数の分割は区別できないことになります.この驚くべき結果は1748年にオイラーによって証明されました.
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